μITRON/POSIX互換のRTOS「eCos」はカーネルもオプション!?:リアルタイムOS列伝(28)(3/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第28回は、μITRON/POSIX互換のRTOS「eCos」を紹介する。
問題はサポートデバイス、商用版の「eCosPro」も選択肢に
問題はサポートデバイスである。先に挙げたようにeCosの最新バージョンは3.0で、ターゲットデバイスはARM、CalmRISC、Cortex-M、FR-V、FR30、H8、IA32、68K/ColdFire、Matsushita AM3x、MIPS、NEC V8xx、PowerPC、SPARC、SuperHとなっている。のだが、サポートハードウェアのWebサイトをご覧いただくと分かるが、既にWebサービスのメンテナンスができてないようで、まともに表示ができないありさま。ダウンロードのページに行くと現在の3.0でサポートされている内容が、以下のように示されている。
- ARM(ARM7TDMI、ARM9、Cortex-M、XScale):GCC 4.6.3
- ARM(ARM7DI、StrongARM):GCC 3.2.1
- ColdFire:GCC 4.3.2
- x86:GCC 4.3.2
- MIPS32:GCC 4.3.2
- PowerPC:GCC 4.3.2
- SuperH:GCC 4.3.2
現時点でのGCCの最新バージョンが12.2(13.0はまだ開発中)ということを考えると、まず環境をそろえるのが一苦労だ。またeCosのダウンロードも、ミラーサイトがかなり死んでいる(http://mirrors.kernel.org/sources.redhat.com/ecos/およびhttp://mirror.facebook.net/sourceware/ecos/の2つはまだ生きていることをは確認した)という状況である。
ではeCosCentricは何をやっているのか? というと、製品版であるeCosProに注力している。こちらはオープンソースソフトウェアではなく、ライセンスを購入する必要がある商用製品だ。eCosCentricは、どうもGNUのソフトウェアを全て書き換えたもようで、ここまで説明したeCosの特徴そのものは継承しつつも、独自のRTOSとして生まれ変わった形だ。
最新版のVersionは4.1に上がっている。eCosProのDeveloper Kitでサポートされているプラットフォーム一覧はこちらのWebサイトで確認できるが、もう少し新しいCortex-A5やCortex-M7、NIOS IIなどもターゲットに入っている。「Raspberry Pi」などもサポートされているので、お手軽に試すならこのあたりを選ぶのがよいだろう。
μITRON互換APIといったeCosの特徴もそのまま継承されている(図4)。ちなみに有償製品と言いつつ、実際にはeCosPro Non-Commercial Public License(非商用向けに無償での利用可)とeCosPro License(商用向けライセンス)が提供されているので、まずは無償版で試してみてはいかがだろうか。
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