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独自AI搭載のパンケーキ盛り付けロボットに、技術承継問題を解決する糸口を見た羽田卓生のロボットDX最前線(4)(2/3 ページ)

「ロボット×DX×工場」をテーマに、さまざまな領域でのロボットを活用したDXの取り組みを紹介する本連載。第4回は、エクサウィザーズが開発した「パンケーキ盛り付けAIロボット」を取り上げる。“美しい”盛り付けを実現するロボットだが、本当に見るべきポイントはその見事なデモンストレーションの奥に潜んでいるように思われる。

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「曖昧」な判断基準にAIでどう対応するか

 ロボットにAIを組み合わせても、自動化が困難な領域もある。それは、作業の「ゴール」が人の曖昧な判断に基づく場合だ。その1つが料理の盛り付けだ。盛り付けは複雑だから良いというものでもなく、何をもって料理を「おいしそう」と感じるかを一意に定義することはできない。言葉では説明できない独特な感覚で良しあしは決まるといえる。同じくデザインなどの世界でも、こうした「曖昧」な人の基準が存在している。

 ロボットで自動化が可能なのは、ねじ締めやボタンを押すといったゴールが明確な作業が中心だ。一方で、曖昧な判断基準が入り込む作業はロボットでは対応することが難しい。

 こうした人の曖昧な判断基準に対して、exaBase Roboticsはあるアプローチでモデル化を試みている。簡単に言えば、特定の基準に基づき高度な評価判断を下せる評価者に、画像のスコアリングを行ってもらい、AIが学習するデータにするというものだ。これによって作成されたAIモデルは、人の評価者に代わってスコアリングが可能になる。

 さらにロボットの作業結果をこのAIモデルがスコアリングし、高得点が出るまで何度でも繰り返させる。最終的には、ロボットが、AI基準で高評価を取れるようになるまでに作業を習得できる。もちろん画像を収集し、それらを1枚1枚評価者がスコアリングしていく必要があり、手間はかかる。しかし、これを考えても自動化メリットが見込める作業は多いかと思う。

あえて「低スコア」の盛り付けをすることも可能

 exaBase Roboticsができることをここまで説明してきたが、それらが全て組み合わさったショーケースの事例が記事冒頭に掲載した動画だ。

 見事、3台のロボットアームが協調して、見た目も立派なパンケーキを見事に盛り付けている。人の曖昧な判断に対応できるAIを使い、ロボット自身がトライ&エラーを繰り返して、高スコアの見た目のパンケーキを盛り付けられるようになったのだ。


スコアリングの仕組み[クリックして拡大]

 当然、このシステムは学習データ次第でさまざまなバリエーションのパンケーキを盛り付けられる。あえて盛り付けを低いスコアにすることも可能だ。例えばこのシステムを実際のレストランやカフェに導入したとして、オフピークの時間帯は、目いっぱい時間をかけて高スコアのパンケーキを盛り付けて、ピーク時には作業可能な時間と適正なスコアの間でバランスをとり、そこそこのパンケーキを量産する、という使い方が考えられる。

あえて低スコアな盛り付け方をした際の動作、評価デモ。前掲の画像に比べて、パンケーキが縦にぴったりと重ねられている。

 ところで、このパンケーキ盛り付けシステムの構成には浅谷氏のこだわりが垣間見えるので、ぜひ注目していただきたい。具体的には、使われている食器が一般家庭で多く見られるものという点だ。実は調理機器も市販の標準品であり、特別な器具固定もしていない。そのためロボットが動作時に、接触して壊したり、転がしたりしてしまう危険も十分ある。

 だが浅谷氏は、「環境をロボット優先に整えた上でロボットを動かすロボットフレンドリーの思想では、実験環境ではうまく動作させられても、結局人の日常的な行動範囲内ではとても動かせない。ロボットがより社会的普及の場を広げるには、まだまだ人の環境にすり寄っていく必要性がある。ロボットフレンドリーの反対をあえて狙っている」と狙いを説明する。

 さらに浅谷氏は、「シェフの所作やふるまいもロボットに学習させたい」とさらなる高みを目指している。現時点では、一般的なキッチン環境で美しく盛り付けができるロボットシステムを開発したが、今後はそのロボットの所作もより“美しい”ものにしていく計画のようだ。

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