検索
ニュース

リアルな対話の力で革新的新薬創出へ、中外製薬が新研究拠点に取り入れた仕掛けとは工場ニュース(1/2 ページ)

 中外製薬は神奈川県横浜市に建設した中外ライフサイエンスパーク横浜をメディア向けに公開した。同社の富士御殿場(静岡県御殿場市)、鎌倉研究所(神奈川県鎌倉市)の機能を集約し、革新的新薬創出を目指す中核的研究拠点として2023年4月の全面稼働を予定している。

Share
Tweet
LINE
Hatena

完成した中外ライフサイエンスパーク横浜 出所:中外製薬

 中外製薬は2022年10月20日、神奈川県横浜市に建設した中外ライフサイエンスパーク横浜をメディア向けに公開した。同社の富士御殿場研究所(静岡県御殿場市)、鎌倉研究所(神奈川県鎌倉市)の機能を集約し、革新的新薬創出を目指す中核的研究拠点として2023年4月の全面稼働を予定している。

2つに分散していた研究機能を集約

 中外製薬が日立製作所の事業所跡地を2016年に購入し、2019年から建設を進めてきた。敷地面積は15万8600m2で全16棟の建物が並ぶ。土地取得代を含めて投資額は1718億円となっている。


中外製薬 取締役 上席執行役員 CFOの板垣氏

 これまで富士御殿場研究所と鎌倉研究所に分散していた創薬研究機能を統合する。薬の標的を見つける探索研究から、薬の原型となる物質を作る化学研究、細胞培養でさまざまな形の抗体を作るバイオ研究、医薬品の候補物質の治療効果を確認する薬理研究、安全性を確認する前臨床研究までを一貫して行う。

 研究に支障をきたさないよう鎌倉研究所、富士御殿場研究所から徐々に移管を進めており、2023年4月の本格稼働後は研究者、スタッフを合わせて約1000人が働く。移管後、両研究所は閉鎖し、土地も売却する。中外ライフサイエンスパーク横浜が国内唯一の創薬研究拠点となる。「イノベーションの創出に努めて、革新的な新薬をこれまで以上のスピード、量で生み出していきたい」(中外製薬 取締役 上席執行役員 CFOの板垣利明氏)。


中外製薬 執行役員 研究本部長の飯倉氏

 中外製薬では2030年に向けた成長戦略「TOP I(トップアイ)2030」で5つの改革を掲げており、その中に創薬も含まれる。「御殿場と鎌倉に分かれているために考え方の融合が起こりにくかった。次世代の創薬で絶対的に大事なのはバイオと化学の融合に加えて、ドライとウェットの融合だ。ドライはデジタル、ウェットは化学やバイオテクノロジーを含む実験科学者を指す。それを実現するためにも1カ所に集まること大切だ。同時に、人と人がアイデアを交換して新しい価値を創造することに長けた人材を育成し、それをもって外部との連携も促進していく」(同社 執行役員 研究本部長の飯倉仁氏)。


「TOP I 2030」で目指す創薬の姿[クリックして拡大]出所:中外製薬

地域との共生も積極的に実施

 施設は「Green Innovation Village〜緑の中に点在する、最先端創造研究所」をコンセプトとし、緑地を多く取り入れた。外装は自然物をイメージしたアースカラーや白を中心とした色彩で周囲の環境との調和を図った。

 地域社会との共生に向けて、敷地内にはサッカーやラグビーなどが可能な人工芝グラウンド1面、テニスコート2面を設け、地域住民に開放する。地域住民が利用できる幅24m、長さ340mの遊歩道も整備、さらに一部敷地5243m2は公園として利用できるように横浜市に提供する。


遊歩道には桜などを植樹した[クリックして拡大]出所:中外製薬

 施設内には子どもたちを対象にした体験施設「バイオラボ」を設け、バイオテクノロジーに関する実験教室などを実施する。まず、2023年4月から小中学生向けの「地域貢献プログラム」を始める。2024年春からは、高校生を対象により専門的な「バイオ人材育成プログラム」をスタートさせる予定だ。「世界最先端の画期的新薬を生み出す研究所でありながら、地域住民にも愛される研究所にしていきたい」(板垣氏)。

子どもたちの背丈に合わせられるよう自動昇降式の実験室の机(左)と、実験用の安全キャビネットは側面からも中をのぞける特注仕様(右)[クリックして拡大]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る