非線形解析のフローと幾何学的非線形性:いまさら聞けない 非線形構造解析入門(3)(1/5 ページ)
多くの3D CADではオプションとしてCAE機能が用意されているが、多くの方が「線形解析」での利用にとどまっており、「非線形解析」にまで踏み出せていない現状がある。本連載では、構造解析でも特に非線形解析にフォーカスし、初心者向けに分かりやすくその特長や活用メリットなどを紹介する。連載第3回では、3つの非線形性のうちの1つ「幾何学的非線形性(形状非線形性)」について取り上げる。
今回から非線形の話を進めていきます。連載第1回で、解析における非線形性は、「幾何学的非線形性」「材料非線形性」「境界条件非線形性」の3つの種類の非線形性によって生じることを解説しました。今回は、そのうちの1つである幾何学的非線形性について説明していきたいと思います。
その前に、若干前回の続きで、線形解析と非線形性解析の解き方の違いをプログラムフローの観点から確認することにします。
線形解析と非線形解析の計算フローの比較
前回解説した“線形解析の流れ”をフロー図で描くと以下のようになります(図1)。
まず、プログラムが入力ファイル(データ)を読み取ると、次にプログラムは「荷重ベクトルの生成」と「剛性マトリクスの生成」を行います。剛性マトリクスの生成プロセスには、「要素剛性マトリクスの生成」と、それらを足し合わせての「全体剛性マトリクスの生成」プロセスが含まれます。さらに、ここに荷重条件や拘束条件といった境界条件を組み込みます。これで、{f}=[K]{u}の式の{f}と[K]の中身が決まりますので、この式を解いてやれば節点変位である{u}を求めることができます。このプロセスがフロー図の中の「マトリクスの求解」になります。変位{u}が求まれば、次にひずみ{ε}、さらにこの応力{σ}が求まります。さらに、そこから内力の計算を行って一連の計算が終了します。
では、“非線形解析の流れ”はどうでしょうか? 図2のフローを見ていただくと分かると思いますが、実は基本的な流れは線形解析と同様です。違うのは「収束判定」というプロセスがある点と、線形解析と同様のプロセスが1回ではなく“複数回繰り返される”という点です。もう少し詳しく見ていきましょう。
ユーザー操作の観点からの違いですが、線形解析の場合、目的となる荷重を一度に載荷して解を得ることになりますが、非線形解析の場合は、一度に最終目的の荷重を載荷するのではなく、いくつかの増分に分割して荷重を載荷するのが一般的です。例えば、最終的に100N載荷する場合でも、10Nずつ10回に分け、トータルで100N載荷するということになります。
これが図2のフロー図の外側の「増分計算」のループになります。さて、1回の増分荷重に対して、1回の計算で終わるのかといえば、実はそうではありません。連載第1回で説明した「Newton-Raphson法(ニュートン法/ニュートン・ラフソン法)」による収束計算を行うことになるため、さらに「反復(収束)計算」のループが入ります。図2の内側のループです。
ここで分かるのは、非線形解析の計算は線形解析の計算と比較して、トータルの時間がかかる、つまり計算コストがかかるということです。同じ規模の解析モデルであっても、線形なら1回の計算で済むのに対し、非線形解析では増分の回数と収束計算の掛け算分の回数計算をすることになります。特に、線形の計算で解析に慣れている場合、そのつもりで計算時間を見積もると大幅に時間が異なるので注意が必要です。
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