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爆発的に増えるデータと消費電力、脱炭素のためインテルは何をするのか製造業×脱炭素 インタビュー(1/2 ページ)

製造業の場合、GHGプロトコルが定めるスコープ3において「販売した製品の使用」時のGHG排出量が大きいことは珍しくない。インテルも同様に、データセンターにおける製品使用時のGHG排出量が大きな割合を持つ。ネットワーク全体のデータ量が爆発的に増加する中、インテルはどのような対策を講じているのか。インテル 執行役員 経営戦略室長の大野誠氏に話を聞いた。

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 カーボンニュートラル達成までのロードマップを公開し、GHG(温室効果ガス)削減を加速することを宣言する企業がグローバルで増えている。半導体業界の巨人、インテルもその1社だ。同社は2022年4月13日、同社のグローバルでのGHG排出量について、2040年までにネットゼロを達成すると宣言し、また、GHGプロトコルで定めるスコープ1、2、3のそれぞれについて削減目標を公開した。

 今後インテルが注力する必要がありそうなのが、サプライチェーン全体の排出量として規定されるスコープ3の削減である。同社はスコープ3について、2030年までに、同社製品が搭載されるPCのカーボンフットプリントを従来比で約30%削減できるようなレファレンスデザインの開発を進めるとともに、半導体製品のサプライチェーン全体でGHG排出量を同比約30%削減するとしている。


スコープ1〜3に関するGHG排出量削減の目標[クリックして拡大] 出所:インテル

 スコープ3は自社の直接排出であるスコープ1、2と異なり、サプライヤーや消費者、顧客企業、輸配送に関わる物流企業など多様なステークホルダーが関与するため、これらの企業と協働しながら取り組みを進めなければならない。

 また、電力消費を伴う製品を展開する企業にとっては、スコープ3が定める排出カテゴリーの中でも、「販売した製品の使用」時の排出量が最も大きくなりやすい。対策としては自社製品の低消費電力化などを進める必要があるが、それには新たな技術開発や技術開発投資を行わなければならない。


インテル 執行役員 経営戦略室 室長の大野誠氏

 インテルも例外ではない。同社の場合、データセンターにおける製品使用時のGHG排出量がとても大きい。昨今、ネットワーク全体のデータ生成量、通信量は世界規模で爆発的に増加している。そうなればデータセンターでの消費電力も将来的にはさらに増加していくだろう。スコープ3の目標を達成するには、インテルは半導体製品に省電力化の仕組みや技術を搭載するといった対策が急務だ。

 インテル 執行役員 経営戦略室 室長の大野誠氏は「技術論的な話でいえば、データ量の増大に対し、電力効率化が追い付けるかという問題がある。だが、(カーボンニュートラル実現のために)取り組まなければならない」と強調した。

データ生成量は2030年までに10倍になるか

 データセンターの電力消費は、「グローバルで消費されるエネルギーの数%を占める」(大野氏)といわれるほど莫大な量だ。とはいえ近年、さまざまな工夫や技術開発を通じて、データセンターにおけるエネルギー消費効率自体は向上している。2006年時点では世界全体の電力消費量に占める割合は約2.5%だったが、2020年には約1.6%まで低下した。

 だが、この低下傾向が続く保証はない。ネットワーク全体におけるデータ生成量は、今後爆発的に増加すると予想されるからだ。「当社は世界全体でのデータ生成量は2020年から2030年までに、約10倍に増えると見ている。2030年にはデータセンターの電力消費量が、世界全体の消費量の約7%を占める可能性もある。GHG排出量削減を目指す上で決して無視できない数値だ」(大野氏)。


データセンターの電力消費量に関する推定値[クリックして拡大] 出所:インテル

 このためインテルではサーバなどの液浸冷却や、使用した水の有効利用、エネルギー回収やその再利用といった、省電力化に向けたさまざまな工夫が必要になる。同社はこれらの分野で研究を進めるとともに、知見をオープン化することで業界全体で共有する取り組みも進めている。

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