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aiwaブランドのデジタル機器が今夏発売――開発したJENESISに聞く舞台裏製品開発ストーリー(1/3 ページ)

受託開発・製造業のJENESISはaiwaブランドによるデジタル機器の製造および販売を発表した。スマートフォン、スマートウォッチ各1機種とタブレット端末4機種を2022年8月から販売開始する。IoT業界の黒子として知られる同社がaiwaブランドを獲得した経緯や開発の舞台裏について取材した。

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JENESISが2022年8月から発売する製品群
JENESISが2022年8月から発売する製品群[クリックで拡大] 写真提供:JENESIS

 受託開発・製造業のJENESISは、aiwaブランドによるデジタル機器の製造および販売を発表した。スマートフォン、スマートウォッチ各1機種とタブレット端末4機種を2022年8月から販売開始する。IoT(モノのインターネット)業界の黒子として知られる同社がaiwaブランドを獲得した経緯や、開発の舞台裏について取材した。

受託製造だけでは生き残れない

 昭和から平成にかけて、AV機器を主に製造、販売していたアイワ(aiwa)。安価で高品質なブランドイメージで長年親しまれてきたが、業績不振から2002年にソニーに吸収合併され、2008年にブランド終息が発表された。

 その後、2017年に十和田オーディオがソニーから商標使用権を獲得。新会社として「アイワ株式会社」を設立し、オーディオ機器に参入したのは記憶に新しい。そのaiwaが外部企業にライセンスを提供し、2022年にスマートフォンやタブレット端末などのデジタル機器に参入する。

 今回発表した製品群はスマートフォンが1万9800円(税込み/市場想定価格)、タブレット端末もエントリーモデルで1万8800円(同)、2in1タブレットの上位モデルでも4万9800円(同)と低価格を実現。法人向けのカスタマイズにも対応し、飲食店向けのオーダー用端末やサイネージ、テレワーク用端末としての活用も見込んでいる。

 開発/製造/販売を担うのはJENESISだ。受託製造が主な事業であり、近年はソースネクストの多言語翻訳機「POCKETALK(ポケトーク)」や、mixiの児童向け見守りデバイス「みてねみまもりGPS」などの製造を手掛けている。法人向けのタブレット端末やAndroidスマートフォンなどの製造を得意とし、近年はソラコムやAtmoph(アトモフ)、MAMORIO(マモリオ)といった国内スタートアップ企業の製品の量産も担っている。

JENESIS 代表取締役社長 CEOの藤岡淳一氏。本取材はオンラインで実施した
JENESIS 代表取締役社長 CEOの藤岡淳一氏。本取材はオンラインで実施した[クリックで拡大] 写真提供:JENESIS

 JENESISは2011年に中国・香港で創業し、深センを主な開発/生産拠点としていた。創業時には自社ブランドでタブレット端末やスマートフォンを製造し、家電量販店を中心に販売していたこともあった。aiwaブランドでの自社製品開発はメーカーとしての再挑戦でもあると、JENESISの創業者である藤岡淳一氏は語る。

 「コンシューマー製品は売れば売るほど価格を下げることを強いられる世界。その中で為替変動リスクやサプライチェーンの調整をしながら自社製品を開発していくことは、創業間もない企業にとっては大きな苦労を伴った」(JENESIS 代表取締役社長 CEO 藤岡淳一氏)

 JENESISは2014年に受託製造に事業をシフト。代理店からの依頼を受けて法人向けのタブレット端末の製造やデジタル機器の製造に主軸を置いた。2014年にイオンから受託した格安スマートフォンがヒットし、国内に格安スマホ市場が広がるきっかけとなった。2018年に製造を受託したポケトークは2021年に出荷台数90万台を超えるヒット商品に成長した。

 10年近い受託製造の経験を経て、サプライチェーンマネジメントや顧客ニーズに沿った開発/製造のノウハウは十分に蓄積した。しかし、JENESISが製造しているデジタル機器業界を見渡してみると、日本企業の撤退が相次ぎ、Huawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)、OPPO(オッポ)などの中華系企業が急速にシェアを伸ばしていた。受託製造だけでは安定的な成長は見込めないと考えたJENESISは、オリジナル製品の製造、販売を検討する。

安くて高品質の「aiwa」をよみがえらせる

 当初、自社製品の製造、販売も検討してみたが、ブランドの浸透や成熟には長時間を要する――。それは最初に自社製品を開発していた際に痛感していた。

 そこで、JENESISは既に存在する家電ブランドのライセンスを活用することを決断。複数の企業との交渉から、最終的にaiwaブランドとの提携をまとめた。

 「aiwaの『安価で高品質』を前提に普及帯の製品に特化したブランドイメージは、当社がこれまでに手掛けてきた製品にも重なる部分があり、その開発哲学には以前から強く共感していた。ムーアの法則が有効だった時代、製品価格を下げないように大手メーカーは過度なスペック競争を繰り広げて、価格を維持しようとしていた」(藤岡氏)

 藤岡氏はそういったメーカー同士のスペック競争に疑問を抱き、海外に渡りJENESISを創業。自らもaiwa同様に品質の安定した普及帯の製品を中国で製造する道を選んだ。

 「当時の技術者の方のお話により、先人の血と汗が滲んだブランドを眠らせておくわけにはいかないと思った。われわれの主戦場はデジタル機器なので、aiwaブランドでオーディオ機器を販売する十和田グループと競合することもない。まずはスマートフォンやタブレット端末など、当社が得意とする製品から販売することになった」(藤岡氏)

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