あらゆる領域のデータを融合せよ、デジタル時代の品質管理の在り方とは:MONOist 製造業×品質セミナー(2/2 ページ)
MONOist主催のオンラインセミナー「いま製造業に求められる『新たな品質』の在り方とは」(2022年6月15〜16日)でアクセンチュアの志田穣氏が基調講演、アムイの山田浩貢氏が特別講演を行い、デジタルを活用した品質管理の重要性を語った。
製造品質と設計品質の強化が重要
アムイの山田氏が行った特別講演のテーマは「品質保証におけるデジタル活用」である。「製造品質」と「設計品質」という2つの観点から高度な製品保証プロセス確立の必要性を語った。
まず山田氏は品質保証強化のプロセスを4段階に分け、第1段階の検査による品質保証、第2段階の生産プロセスでの品質保証までは製造品質の強化、そして第3段階の開発、設計および販売サービスを含めた品質保証と第4段階の廃棄までの商品サイクルを意識した品質保証が設計品質の強化にあたると説明した。
山田氏は「大手製造業の方は第1段階から第4段階まで必ず取り組んでいると話すが、現場に足を運ぶと第2段階でもまだ取り組むべき内容があったり、第3段階にまだ移行できていない場合が多い。これまでの人や紙を主体とした管理からIT、IoTによる最新技術を取り入れることで、より安定した良品生産の維持が可能になる」と語る。
製造品質を強化するためには、品質基準や検査実績、製造条件、ロット情報など品質保証に必要なデータを一元管理し、リアルタイムかつ定量的な分析を行うことで、良品の製造条件維持とクレーム発生時の対処の迅速化を図ることが大切とした。
そのためにまず必要なのは品質基準のデータベース化だ。「自社だけでなく、子会社、関係会社、取引先などとも連携していくことが求められる」(山田氏)。そして検査工程を自動化し、検査データを蓄積、設備から収集した製造条件と併せて良品、不良品の傾向を把握して適時見直しを図る。クレーム発生時にはそれらから要因解析と影響範囲のトレースを行い、即回収につなげる。「こういうサイクルを回すことで、安定した品質を確保しながらモノづくりできる」(同氏)。
自社に合ったシステムが生産現場に活気をもたらす
山田氏はデータの解析、活用のポイントについて、QC(品質管理)7つ道具のデジタル化を挙げた。製造条件や工程検査、製品検査などのデータを折れ線グラフや分布図、散布図、相関図などを用いることで多角的そして視覚的に分析しやすくする。また、日次や月次に基づいた定型解析だけでなく、必要に応じて過去データと現状を比較するなど非定型解析も行っていくことで、解析の幅を広げることができるという。
設計品質強化については品質機能展開で社内標準を明確化し、製品開発データベースを構築して属人化しているノウハウのデータ化を推奨した。品質不具合に関してもデータベース化することで発生要因の特定や再発防止策の策定、新製品開発にも役立つ。「デジタルエンジニアリングという言葉もあるが、実際に作ってみないと分からないこともある」(山田氏)と、試作品製造においても各工程からデータを集め、製品評価と要因解析を迅速に行うことで、製品開発期間を短縮できる。
最後に山田氏は品質保証のデジタル化がもたらす効果として、不良品や設備停止の減少などの定量効果だけではなく、高度な品質保証プロセス実現による異常対応の迅速化や信頼向上、さらには取引拡大といった定性効果も見込めるとし、「定性効果は定量効果のように数字には見えないが効果は非常に大きい。時間は掛かっても地道に自社の工程、製品、文化に合ったシステムを作り上げれば日々の生産現場に活気をもたらす」と語った。
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