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欧州自工会から脱退して独自にフォーラムを開催、分からないステランティスの狙い自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

さて、今週はステランティスから驚きの発表がありました。2022年末で欧州自動車工業会(ACEA)を脱退するというのです。

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 日曜日です。1週間お疲れさまでした。湿度がいやな感じになってきましたね。夏が近づくと毎年思うのですが、エアコンの設定温度が1℃違うだけで暑くなったり、冷えすぎたりしてしまいます。カーエアコンも同様に、なかなかちょうどいいポイントがないと感じてしまいます。

 さて、今週はステランティスから驚きの発表がありました。2022年末で欧州自動車工業会(ACEA)を脱退するというのです。

 欧州自動車工業会からの脱退に合わせて、ステランティスは2023年から年に1度の公開ミーティング「Freedom of Mobility Forum(モビリティの自由を考えるフォーラム)」を実施します(※1)。このフォーラムに多種多様な専門家を招待して、「さまざまな問題をあらゆる角度から分析し、解決策を見出し、迅速に行動することを目指す」(プレスリリース)としています。交通分野、政治家、学者など、自動車産業の多様なステークホルダーの代表者を招く方針です。

(※1)プレスリリース

 また、このフォーラムでは「グローバルな視点で360度のアプローチによって課題に取り組む」「事実に基づき物事の本質や解決策を導き出す」「フォーラムを一般公開し、全ての見解を公開することを保証する」「参加者は誠実かつ尊重的かつ協力的な態度で取り組む」といったポリシーも掲げています。フォーラムをわざわざ立ち上げる必要があるということは、欧州自動車工業会にはこれらのポリシーが足りないのでしょうか?

米国は団結を強化、ステランティスが抜けるのは欧州の団体だけ?

 業界団体は、みんなで団結して政治に対する発言力を高めようという趣旨のものであるはずです。その事業から、あるいはその地域から撤退したわけでもないのに、地域を代表する業界団体から抜けるというのは、かなり珍しいことなのではないでしょうか。

 米国を見ると、団結して発言力を高めようという流れはもちろんあり、米国自動車工業会(AAM)とグローバル・オートメーカーズという2つの業界団体が統合して、米国自動車イノベーション協会(AAI)という団体を2020年に立ち上げました。

 日本経済新聞によれば、米国で自動車を販売するメーカーの9割以上が加盟しています(テスラ除く)。自動車メーカーだけでなく、大手ティア1サプライヤーや半導体メーカーも参加しています。ステランティスは米国自動車イノベーション協会から脱退するとは言っていませんでしたが、どうなるのでしょうか。

 余談ですが、最近の米国自動車イノベーション協会からの声明をみると、EV(電気自動車)の購入補助となる税額控除を継続するよう求めています(※2)

(※2)Pass the EV Tax Credit for American Drivers and Economic Security

 現在のEVの税額控除では、自動車メーカーが1年間に20万台のEVを販売すると段階的に廃止されます。テスラやGM(General Motors)が既にその上限に達しており、トヨタ自動車やフォード、日産自動車もそれに続くと見込んでいます。米国での2021年のEVの販売台数は65万台で、シェアは4.4%でした。EVのシェアを50%に増やすにはさらに780万台の販売が必要で、すぐに上限に達するようではいけないと訴えています。

 新車全体の平均価格が4万6500ドルなのに対し、EVの平均的な販売価格は6万5000ドルで大きく上回っています。「米国の90%の家庭の世帯年収はEVの平均価格を下回っている」とも言及し、EV購入の支援の必要性を強調しています。充電インフラへの投資が加速するのも、何百万人ものドライバーがEVに乗り換えてこそだと述べています。EVを普及させたいのであれば、より多くの支援を、というメッセージは分かりやすいですね。


EVのコストは新車平均と比べて高額である[クリックで拡大] 出所:米国自動車イノベーション協会

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