領域最適化の基本的な考え方を理解する:フリーFEMソフトとExcelマクロで形状最適化(11)(3/5 ページ)
原理原則を押さえていれば、高額なソフトウェアを用意せずとも「パラメトリック最適化」「トポロジー最適化」「領域最適化」といった“形状最適化”手法を試すことができる! 本連載ではフリーのFEM(有限要素法)ソフトウェア「LISA」と「Excel」のマクロプログラムを用いた形状最適化にチャレンジする。連載第11回では、トポロジー最適化のような派手さはないが、とても実用的な技術である「領域最適化」について、その基本的な考え方を解説する。
領域Ωsを求めるってどういうこと?
「物体力と外力がなす仕事量が最小になるような領域Ωsを求めてください」というのが命題でした。筆者が経験した数学は、数を求めることでした。例えば、領域をスプライン曲線で表現し、スプライン曲線のパラメータを求めるというのなら分かります。しかし、今回はパラメータなしの領域Ωsを求める問題です。さて、どうするのでしょうか。
目的関数は式1、制約関数は式2、式3なので、ラグランジュ関数Lは次式で定義できます。ここでラグランジュ乗数はwとΛとなります。
ラグランジュ関数Lを微分したものがゼロというのが「ラグランジュ未定乗数法」でした。ラグランジュ関数Lを微分したものは、参考文献[1][2][3]によると式20で示されています。本連載で、あえて使ってこなかったドット「・」(ニュートンの記法)は微分を意味し、LのEular導関数、あるいは物質導関数です。ダッシュ「’」(ラグランジュの記法)も微分を意味し、Lの形状導関数です。このあたりの詳細については、参考文献[1][2][3]を確認してみてください。
lG(V)は次式で表されます。
2つのベクトルVとGが登場しました。
図1は、初期領域Ωと変動後の領域Ωsとの1対1の写像と捉えることができて、写像Tsとして表現できます。写像の関係を次式で表現します。
媒介変数sは「変動の履歴」を表しています。領域の変動は、次のような初期条件と微分方程式を用いて表現できます。
上式は微分なので、ベクトルVは、最初の位置がXの点の移動経路(直線ではなく曲線です)が、xに至ったときの移動の方向(速度場)と解釈できます。Vは1階微分なので形式的に次式を書くこともできます。Taylor展開ですね。O(|Δs|)は微小項です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.