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ステアリングのない自動運転車はどのような変化をもたらすのか和田憲一郎の電動化新時代!(45)(1/3 ページ)

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2022年3月30日、官報に「自動運転システム搭載車の乗員保護について」と題する連邦自動車安全基準(FMVSS)最終規則を公表した。本件に関して、日本ではあまり報道されていないが、米国自動車関係者にとっては、インパクトの大きな規則制定だろう。ではどのような影響が考えられるのか、今後どのような変化をもたらすのか。筆者なりにひもとき、説明していく。

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 米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2022年3月30日、官報に「自動運転システム搭載車の乗員保護について」と題する連邦自動車安全基準(FMVSS)最終規則を公表した。本件に関して、日本ではあまり報道されていないが、米国自動車関係者にとっては、インパクトの大きな規則制定だろう。ではどのような影響が考えられるのか、今後どのような変化をもたらすのか。筆者なりにひもとき、説明していく。

→連載「和田憲一郎の電動化新時代!」バックナンバー

自動運転システム搭載車の乗員保護に関する最終規則制定の背景

 NHTSAはこれまで多くの規則を制定してきた。筆者が米国向けの車両開発に携わっていた頃、助手席エアバッグやカーテンエアバッグの乗員衝突保護など、多くの規則が制定された。その都度、どう対応するか頭を悩ませたが、振り返ってみると、NHTSAは常に先を読んで規則を設定することで、自動車の安全性を高めてきたと考える。しかし、今回の自動運転システム搭載車の乗員保護に関する最終規則はこれまでと比べて異質である。

 米国ではGoogle(グーグル)系のWaymo、GM(General Motors)系のCruiseなど、自動運転車を開発する企業は公道で自動運転システム(ADS:Automated Driving Systems)搭載車の実証試験を行うため、NHTSAから幾つかの規則の免除を得ていた。さらには運転者不在の実証試験車も加わるようになってきた。このようなクルマが増えるにつれ、規則が明確に定まっていないことに対する懸念の声が大きくなってきた。そのような潮流の中、規則立案部門であるNHTSAは、一部には時期尚早との声があるものの、不確実性が存在し続けていることを認識した上で、この時期に規則を確定させることが適切との判断に至ったようだ。

 この最終規則の決定に先立ち、2020年3月30日に立法案公告(NPRM:Notice of Proposed Rule-Making)が発行されている。社会的に大きな影響を与える規制の制定は、事前に告知されなければならないからである。その結果、NHTSAは、自動車メーカーや自動運転システムの開発企業、業界団体、消費者団体、障害者団体などから45件のコメントを受け取ったようだ。その後に各種協議を行い、約2年後の2022年3月30日に官報記載に至っている。


図表1:Waymoの自動運転車。米国アリゾナ州の一部地域では、一般ユーザーを乗せて運行している[クリックで拡大] 出所:Waymo
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