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音振動のモデリング 〜実際の製品をモデリングする際のさまざまな手法〜1Dモデリングの勘所(7)(2/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第7回では、引き続き「音振動」のモデリングを扱う。今回は、振動の具体的事例として、流体による構造物の振動のモデリング方法について述べるとともに、振動のモデリングの際に重要な減衰の取り扱いを説明する。さらに、一般的な多自由度系の振動の表現方法と、その具体例としての構造物(梁)の「MKモデリング」に触れ、最後に音振動をエネルギーの流れで捉える方法を紹介する。

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減衰のモデリング

★:速度比例型の減衰力
※★部の表記

 今まで減衰に関しては、速度比例型の減衰力★(※cxの「x」の上に、時間に関する一階微分の簡易表現であるドット「・」を記載)で表し、減衰定数cで定義した。実際の計算では経験的にこの値を定義、使用しているが、設定根拠が明確ではない。そこで、理論的に減衰を定義する方法を説明する。

 前項で流体による構造物の振動について紹介した。この場合、流体抵抗による減衰力が作用する。ここでは、流体が静止している場合の減衰力について考える。図2に示すように、構造物が振動すると、流体から抗力

式4
式4

を受ける。ここでのCDは抗力係数で、形状とレイノルズ数で決まる値である。図2には円柱断面の抗力係数を示す。以降、図1で示した手順で式を展開していくと、最終的に静止流体による減衰は、

式5
式5

となる。すなわち、静止流体による減衰は振動振幅、振動数に比例する。図1のように流体が流れている場合の減衰力も同様に定義できる。以上は、流体が水でも空気でも成立するが、減衰は流体の密度に比例するため、水の方が空気よりも3桁減衰力が大きいことが分かる。

静止流体による減衰
図2 静止流体による減衰[クリックで拡大]

構造物を構成する材料による減衰

 次に、構造物を構成する材料による減衰を考える。材料の減衰は損失係数ηで表現され、縦弾性係数などの物性値と同様に、材料ごとに参照できる。通常、減衰を考慮した縦弾性係数は、

式6
式6

と複素表現される。これは、減衰力と弾性力は位相が90度ずれていることから理解できる。なお、損失係数は金属の場合0.001程度である。この考え方にのっとって、図3に示すような通常の減衰と材料減衰を有するばね要素を考えると、この系を支配する運動方程式は、

式7
式7

となる。以降、図3に示す手順で式を展開していくと、最終的に材料による減衰は、

式8
式8

となる。すなわち、損失係数に比例して、振動数に反比例する。なお、共振点ではζm=η/2となる。

材料による減衰
図3 材料による減衰[クリックで拡大]

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