「冷蔵庫青く光らせて」、ドン・キホーテのPB家電開発舞台裏:未来につなぐ中小製造業の在り方(3/3 ページ)
「驚安の殿堂」の名に恥じぬほど安く、かつ、独自色の強い品ぞろえで有名なディスカウントストア、ドン・キホーテ。同社は独自のPB家電製品も多数展開している。その開発を支えてきた1社がアズマだ。アズマは現在、ドンキPB家電開発の知見を生かした新ブランド製造に挑戦する。背景には”淘汰”への危機感があった。
ドンキPB開発で養った機能とコストのバランス感
MONOist 「強み」とはどういうものですか。
小川氏 PB開発で培った製品企画のノウハウですね。製品の機能数とコスト感をどのようにバランスを取るべきか、見当を付けられるのは大きな強みだと思っています。
ドン・キホーテは製品が売れる価格帯というのを把握しています。求められる価格感を実現するために、余分な機能を削減することもあります。例えば、最近のBluetooth対応スピーカーには大体ラジオ機能が付いていますが、若年層はあまり使いません。こういう場合は、機器の使用方法の煩雑化を避ける意味でも、機能を削除して、低コスト化につなげるべきと判断します。
実際、消費者は機能面をすごく重視しているわけではありません。手ごろな値段感か否かで購買判断を下していると感じることも多々あります。市場や売れ筋を気にせずに作るのではなく、消費者が本当に「欲しい」と思ってもらえる製品を価格込みで作ることが大事かと思います。
MONOist そこにファブレスメーカーとしての経験も生かせるでしょうか。
小川氏 やはり、自前で一から生産体制を構築するわけではない分、設備投資のリスクを限りなく減らした上で自社独自のアイデアを製品に落とし込めるのは大きなメリットです。
とはいえ、単にコストを減らすだけでなく、製品品質をしっかりと保証した家電製品を製造しなくてはなりません。これには製造を依頼する工場の見極めが非常に大事になりますが、当社はこれまでの経験でこの辺りのノウハウも蓄積してきています。
PB開発の知見生かし、「生活の困りごと」を解決したい
MONOist 「受託からの脱却」を目指したとのことですが、社内に何か変化はありましたか。
小川氏 製品企画チームを新しく組織しました。他社のPBだけを作っていたころは、製品企画の専門チームというものがしっかりとは存在していませんでした。営業チームがクライアントの要望を吸い上げて、そのまま商品化につなげていたのです。今はデザイン会社の方に入ってもらい、市場ニーズを吸い上げながらトップダウンで製品企画の立案ができる組織作りを進めています。
始めてみると、多くの社員は前のめりで商品企画に関わってくれるようになりました。いままで本当は社員も提案したいけれど、会社が新しいことにトライする雰囲気じゃなかったから諦めていたこともたくさんあったんだと思います。
中国現地の工場とやり取りをする営業サポート担当者1人、EC担当者2人の3人からなる女性従業員と外部デザイン会社を交えた製品企画チームがあるのですが、彼女らのおかげで、「2食おやこ電気なべ」など主婦層の意見を取り入れた新製品も生み出せました。中国語ができるスタッフのおかげで、その日出たアイデアをすぐに現地工場に提案するなどスピーディーな開発を進めています。
MONOist 製品開発の原動力になっている思いなど、教えてください。
顧客の困りごとを解決したいという気持ちが強くあります。当社は社名がほとんど世に知られていない企業です。そのこと自体は構わないのですが、その分、世の中の困りごとを解決できる製品、そのアイデアをしっかりと形にして世に出していきたい。独自ブランドを立ち上げたのも、そうした思いが根底にあります。
そうした思いが生まれたのもドン・キホーテのPB製品を開発したのがきっかけだったかもしれません。当社が開発した製品に不良があれば、ドン・キホーテから報告が入ります。ある時、「買った加湿器の機械部分に水が侵入してたまってしまった」というクレームが来ました。そこで、翌年販売分の製品では機械部分に排水用のドレンを付けたのですが、発売後、同じ購入客の方が「こんな安い商品でもブラッシュアップしてくれるとは思いませんでした」と感謝の言葉を送ってくれました。
PB開発でも自社ブランド開発でも、ただクライアントの要望を形にする「パッケージ屋」ではなく、購入客の声をしっかりと受け止め、商品の悪い部分を少しずつ改善していけるメーカーでありたいと思っています。
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