RTOS以上組み込みLinux未満、Google第3のOS「Fuchsia」は大輪の花を咲かせるか:リアルタイムOS列伝(20)(1/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第20回は、Googleの第3のOSと呼ばれる「Fuchsia」を紹介する。RTOSと言うべきかどうかは意見の分かれるところだが、組み込み向けを意識したOSであることだけは確かだ。
今回紹介する「Fuchsia」は、Googleが開発したちょっと毛色の異なるリアルタイムOS(RTOS)である。Fuchsiaは花の名前(日本ではフクシアやフーシャ、あるいはホクシャなどとも呼ばれたりするらしい)だが、そう名付けた理由は不明である(図1)。
スマートディスプレイ「Nest Hub」で採用
FuchsiaはGoogleが開発した第3のOSである。このあたりの経緯は、Fuchsiaを採用したスマートディスプレイ「Nest Hub」の記事で紹介されているので、お読みになった方もいるかと思う。2020年の発表時には、Fuchsiaを「汎用OSを構築するための長期プロジェクト」とGoogleは説明しているが、この「汎用」というのはWindowsやmacOS、Android/iOSのように「コンシューマーが直接操作する」ことは必ずしも意味しない。そもそも先の記事にあるようにMagenta/Zirconというリアルタイムカーネルをベースとしているあたりからも、WindowsやLinuxとはそもそも「汎用」の方向性が違っているように思われる。実際、最初にポーティングされたのはGoogleのNest Hubというあたりからも、RTOSと言ってよいかどうかやや厳しいものはあるが、組み込み向けを意識したOSであることは間違いないと思う。
さてそのFuchsia、2019年9月にANSSI(French Network and Information Security Agency)のMickaël Salaün氏が行った説明のスライドがあるので、これを基にちょっと説明したい。といっても、最初のページ(図2)にあるように、この情報はやや古い可能性がある。
さてOSのターゲットであるが、いわゆるエンドユーザーデバイスである。Nest Hubにポーティングというのも、まさしくエンドユーザーデバイスらしい。もっとも、スマートフォンだのラップトップだのが出ているあたりは、それがそうしたデバイスのメインとなるOS向けなのか、それともそうした機器のサブシステムのOSを狙っているのかはよく分からない。そして、目的がセキュリティ(Security)、信頼性(Reliability)、モジュール性(Modularity)というのは、LinuxベースのOSでは実現が難しいことをここで実現したかった、というように見える。
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