スマート工場で期待されるローカル5Gの安全な運用には何が必要なのか:いまこそ知りたいローカル5Gのセキュリティ(前編)(3/3 ページ)
製造業での活用が期待されているローカル5Gを安全に運用していくために、サイバーセキュリティの観点で押さえておくべきポイントを前編と後編の2回に分けて解説する本連載。前編では、ローカル5Gの特徴や製造業のユースケース、モバイル通信におけるセキュリティリスクについて説明する。
モバイル通信におけるセキュリティリスクの要因
ここまで、製造業におけるローカル5Gの認知状況や今後の普及への期待について触れてきたが、製造業に限らず企業のDXを推進していく上で、ローカル5Gは非常に有益なツールとなることが理解いただけたかと思う。
一方で、ローカル5G導入において、ローカル5Gで発生する特異なセキュリティリスクや脅威についても考慮しなければならない。ローカル5G環境で想定されるサイバーセキュリティ脅威については、次回の後編で詳しく紹介するが、ここではローカル5Gを含めたモバイル通信におけるセキュリティリスクの要因について言及する。
ローカル5Gを含むモバイル通信は、モバイルネットワークにおけるセキュリティリスクだけではなく、そのインフラ上に構築、展開されるITシステムや、ITシステムと相互接続するIoT機器に対するセキュリティリスクも併せて考えていかなければならない。例えば、ITやIoTの環境では、子会社や関連企業などのビジネス上のサプライチェーンを狙ったサイバー攻撃によるセキュリティ脅威の横感染や、IT/IoT機器の不十分な脆弱性管理による攻撃者のシステムへの侵入、常時ネットワーク接続されるIoT機器を仲介したサイバー攻撃の機会増加など、さまざまなセキュリティリスクが考えられる。
ここにモバイル通信が加わることにより、ネットワークケーブルなどの物理的な制約を受けない不特定のIoT機器のネットワーク接続や、利用場所が固定化されないIoT機器を特定する難しさなど、新たなリスクも考慮しなければならない。ここに5Gやローカル5Gの要素が加わると、5Gの高速大容量通信の特性を逆手に取った大規模なDDoS(分散型サービス妨害)などのサイバー攻撃も増加することが懸念される。
このように、ローカル5Gなどのモバイル通信を導入することに対して、新たなセキュリティリスクを考慮する必要がある。セキュリティ対策をモバイル通信導入後に施すことは、ITやIoTを含むシステム全体におけるセキュリティの見直しだけでなく、モバイル通信を活用した運用や体制まで見直さなければならないことも懸念される。そのため、モバイル通信を活用した新たな取り組みを進める際には、検討の初期段階からモバイル通信含むシステム全体のセキュリティリスクを考慮し、適切なセキュリティ対策を施すことが、今後ますます重要になるだろう。
前編のまとめ
今回の前編では、製造業のDX推進を加速する変革点となり得るローカル5Gについて、その概要から想定されるユースケース、そしてローカル5G導入時で新たに考慮すべきセキュリティリスクについて紹介した。次回の後編では、より具体的に、ローカル5Gに潜むサイバーセキュリティリスク、ローカル5Gを安全に活用するためのセキュリティ対策のポイントについて解説する。
筆者プロフィール
古賀 恒昭(こが つねあき)/トレンドマイクロ株式会社 ビジネスマーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー
国内電機メーカーにてSI、エンジニア、商品企画とB2B向けビジネスや製品開発に従事した後、トレンドマイクロへ入社。現在は、IoT/IIoTセキュリティ、特に5G/ローカル5Gおよびコネクテッドカー向けセキュリティソリューション全般のマーケティングを担当。
トレンドマイクロ 企業向け5Gセキュリティ
https://www.trendmicro.com/ja_jp/business/solutions/iot/enterprise-5g-iot.html
トレンドマイクロ コネクテッドカーセキュリティ
https://www.trendmicro.com/ja_jp/business/solutions/iot/connected-car.html
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