AMDの組み込み部門となったザイリンクス、工場の無線化で5GとTSNをつなぐ:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
ザイリンクスが産業機器向けを中心とした同社の事業展開について説明。2021年4月に発表したAIカメラ向けSOM製品「Kria」が高い評価を得ており、新パッケージの採用で大幅な小型化を果たした「UltraScale+」製品群の展開も好調だ。ローカル5Gなどの活用で進みつつある工場の無線化に向けて、5GとTSNをつなぐIPの開発も進めているという。
ザイリンクス(Xilinx)は2022年2月17日、オンラインで会見を開き、産業機器向けを中心とした同社の事業展開について説明した※)。2021年4月に発表したAIカメラ向けSOM(System on Module)製品「Kria」が高い評価を得ており、新パッケージの採用で大幅な小型化を果たした「UltraScale+」製品群の展開も好調だ。加えて、ローカル5Gなどの活用で進みつつある工場の無線化に向けて、5GとTSN(Time-Sensitive Networking)をつなぐIPの開発も進めているという。
※)なお、2022年2月14日(現地時間)に、AMDによるザイリンクスの買収完了が発表されている。今回の会見時点でのザイリンクスは「Xilinx, which is now part of AMD(AMDの一員となったザイリンクス)」が正確な位置付けとなるが、本記事では便宜上「ザイリンクス」と表記する。
ザイリンクス 産業、ビジョン、ヘルスケアおよびサイエンス担当ディレクターのチェタン・コーナ(Chetan Khona)氏は「AMDとザイリンクスは一体となることで、ハイパーフォーマンスとアダプティブ(適応型)コンピューティングのリーダーになれる。今後は収益面で多大な相乗効果が得られるだろう」と語る。AMDの中でザイリンクスはAECG(Adaptive and Embedded Computing Group)に組織を移行し、これまで推進してきたFPGAを用いたアダプティブコンピューティングと組み込み分野向けの事業展開を担うことになる。
コーナ氏が強い手応えを感じているのが、ザイリンクスの事業拡大に大きく貢献してきたプログラマブルSoCの「Zynq UltraScale+ MPSoC」を搭載する、AIカメラ向けSOM製品のKriaである。特に、コーナ氏が担当する産業、ビジョン、ヘルスケアおよびサイエンス市場においてKriaは製品の短期開発に大きく貢献しているという。その一例として、ドイツで2021年10月に開催された展示会「Vision Stuttgart」では、発表から半年しか経過していないにもかかわらず、Optomotiveという企業がKriaを用いたAIカメラ製品を4台展示していたことを紹介した。
Zynq UltraScale+ MPSoCやFPGA製品である「Aritix UltraScale+ FPGA」などのUltraScale+製品群については、InFO(Integrated Fan-Out)パッケージの採用により大幅な小型化を果たしている。Zynq UltraScale+ MPSoCのInFOパッケージ品は、従来パッケージとの比較でフットプリントを60%、厚さを70%削減した。「演算密度が重視されるが産業機器や医療機器向けのウェアラブル端末などで高い評価を得ている」(コーナ氏)。
また、先述のVision Stuttgartにおける産業機器向けカメラの要件として、ソニーが提唱する「SLVS EC v2.0」などのCMOSセンサー用高速シリアル接続バスへの対応や小型化への要求によってUltraScale+製品群の需要が拡大している。例えば、カナダのLucid Vision Labsが開発した産業用AIカメラ「Triton Edge」は、Zynq UltraScale+ MPSoCのInFOパッケージの採用によって「手のひらに4個乗るくらい」(コーナ氏)というレベルで、高性能と大幅な小型化を両立したという。
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