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セキュリティは無駄なのでイノベーションに極振りしたいと思います。事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(6)(3/5 ページ)

社内DXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命された、ABC化学薬品新卒6年目の青井葵。元工場長の変わり者、古井課長の手助けも得て、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」を推進していく本連載。今回は、ABC化学薬品の傘下に加わったスタートアップが開発中のスマートドローンのセキュリティ対策について考える。

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井野辺紫音の開発への思い

世間のブームを否定するわけではないのですが、あまり、農薬が悪といわれると、自分たちまで悪といわれているような気がしてとても悔しく思っていました。


 なるほど、確かにその気持ちは分かる気がする。推しのラノベキャラがネットでたたかれているのを見ると、自分までたたかれている気になるものね。

私たちが開発したIoT農薬散布ドローンは、複数のドローンが連携することで、最小限で効率的な農薬散布を実現します。今開発中の機能は、カメラ画像を使って稲の生育状況をクラウドのAIで解析し、農薬量を最適化するものです。


すごいですね。そんなことができるのですか。


はい、私は、農薬の使用を最適化することで、健康への影響を最小限にしつつ、日本の農家の存続を支援するこの仕事に誇りを持っています。


ご実家のためでもあると。


最初は、その気持ちが大きかったのですが、今は日本の農業文化を支えたい使命感のようなものが強くて。なるべく早くこのソリューションを世に出したいのです。


 なるほど、少し見直したなぁ。ちょっと直情的過ぎるから誤解されそうな人だけど、ちゃんとした信念をもって仕事しているのだな。

なるほど、プロジェクトの概要はよく分かりました。それでセキュリティ対策が要らないというのはどういうことでしょうか。


このシステムが扱うデータは、ドローンの軌跡データとか、農薬使用量とか、農地の空撮画像とか、個人情報でも重要情報でも何でもないものばかりですよ。セキュリティ対策が必要とは思えません。


確かに、そう聞くと扱うデータの機微性はそこまで高くない気もしますね。


あと、セキュリティ対策を導入すると、余計なリソースを消費するのですよ。これはコストという意味でも、ドローンやシステム上のメモリやCPU使用量という意味でもです。それやるくらいなら、新しい機能を搭載した方がましです。


 むむぅ。そこまで言われるとなんだかなぁ。さっきの農薬の話と一緒で、私まで否定されている気になってきた。でもなんか違う気がする。なんだろう。

ということは、既に御社内で、セキュリティに関するリスク分析を実施して、必要なしという判断をされたということでしょうか。


あー、今くらいの話は、メンバーで知恵を出し合って、それで行こうとなりました。実際、スケジュールが厳しくて、セキュリティ対策のこと考えている暇がないというのもありますね。


ということは、特に専門家の知見をもって判断したわけではないと。


そこまでお金かけられないですしね。


 いかにも危なっかしいなぁ。石橋をたたいて割っちゃうくらい慎重な工場の人たちとはえらい違いだ。これはこのまま引き下がるわけにはいかないぞ。何か気づいていないリスクがありそうな気がする。

井之辺さんのお話は分かりました。とはいえ、本件はABC化学薬品グループの全社的なDXセキュリティプロジェクトの一環として進めていますので、私の一存では結論は出せません。大変申し訳ないのですが、専門家を加えたリスク評価をさせていただいて、その結果で判断ということでいかがでしょうか。


無駄だと思いますけどね。ただ、リスク評価の結果がなければ、会社として結論が出せないというのも理解しました。


ご理解ありがとうございます。では、そのように進めさせていただきます。


あー、はい、よろしくお願いします。ところで、青井さん、もしお時間ありましたら、動作デモを見ていきませんか? ラボでちょうど今開発中の機器をテスト中でして。


ええ、ぜひお願いします。


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