IoTを軸に製造業DXを進める4つのステージ、そしてはじめの一歩:製造業DX基礎解説(2/4 ページ)
製造業でも求められるようになっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。本稿では、IoTを軸とした製造業におけるDXの進め方を4つのステージに分けて解説する。また、製造業DXのはじめの一歩となるIoTで効果を得るための2つのポイントも紹介する。
ステージ1&2:モノやコトのデータ化とリアルタイム共有
「ステージ1」は、まだデジタル化されていないモノやコトをデータ化するステージです。データを活用するためには、はじめにデータ化を行う必要があります。例えば、紙の帳票を電子化したり、はんこを押していた稟議(りんぎ)をワークフローシステムで行ったりといったことが、このステージに当てはまります。その際、できるだけ自動的にデータが蓄積していく仕組みを作ることが必要です。データ化することで、情報が流通しやすくなり、必要なときに、必要とする人がデータを取り出して閲覧できるようになります。
工場の機器や現地に設置した装置などの「モノ」もデジタル化することで、現地に人が行かなくても状況を把握できるようになります。このときに必要となるのがセンサーや、センサーの代わりに分析用の画像を取得するカメラといった技術です。
「ステージ2」は、ステージ1で取得したデータをリアルタイムに共有したり、可視化したりすることで活用していきます。データはただ蓄積されているだけでは活用できません。冒頭の「手旗信号」の例のように、誰が何のためにデータを役立てられるか、そのために必要な伝えるスピードやリアルタイム性を考えていきます。このステージで使われる技術が、クラウドやIoTです。データを蓄積するためのサーバやストレージを準備したり、ネットワーク工事の不要なセルラー通信を活用したりすることで、データ活用の範囲をスピーディーに広げられます。
ステージ2を実現しているDX事例
では、ステージ2を実現している実際の活用事例を見てみましょう。
日立製作所は、水道管の漏水検知にIoTを導入しています。「ステージ1」では、地中の水道管に振動センサーを取り付けることで水道管の状況をデジタル化し、「ステージ2」では、これらのデータをセルラー通信を用いてクラウドに蓄積、分析することで漏水可能性がある水道管を検知できるようにしています。
このような点検作業は、今までは作業員が現地に赴く必要がありました。データを取得するための作業が発生しているケースにおいて、作業のデジタル化と自動化をセットで実施することが有効です。一度設置すれば、少ない人数で広範囲の状況を自動的にデータ収集できます。
トーア紡コーポレーションは、工場の使用電力の管理をIoT化しています。工場などの大型施設では、使用電力をピーク時の利用量にあわせて契約するケースが多くあります。そのため、ピークを超えないよう、常時使用電力を監視する必要があります。
この工場では使用電力の情報は、「ステージ1」としてデジタルで取得できていたものの、1箇所の監視センターでしか見ることができませんでした。そこで「ステージ2」として、このデータをセルラー通信によってクラウド側で蓄積し、そのデータを構内のディスプレイや各自のPC、スマートフォンからすぐにチェックできる仕組みを迅速に構築しました。これにより、作業者が使用電力量の状況を把握し、省エネのためのアクションを自律的に取れるようになりました。
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