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冴えない工場セキュリティガイドラインの育てかた事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(4)(3/4 ページ)

社内DXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命された、ABC化学薬品新卒6年目の青井葵。元工場長の変わり者、古井課長の手助けも得て、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」を推進していく本連載。今回は、ピンとこない工場セキュリティのガイドラインをどのように使いやすいものにしていくかを考える。

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説明責任と実効性のバランスが大事

ところで話変わるけど、青井さんは、このご時世で、外出するときはマスクすると思うけど、マスク選びに何かポリシーとかある?


え? あ、そうですね、コロナ禍の初めのうちは、複数の布製マスクを洗って使い回していましたが、不織布マスクの方が効果あると聞いたので、今は、そちらを使い捨てで使っています。それがどうかしましたか?


なるほど。でも、そもそもマスクしないという選択肢はないよね。なぜ?


え? そりゃルールだからですよ。お店や交通機関によっては、マスクしてないと利用できないですし。


だよね。で、実際のところマスクってどれくらいの効果あるのだろうね。テレビで欧米の人たちとか全然マスクしてないじゃない? 青井さんは、どう考えてるの?


うーん、私は専門家でないから分からないのですが、日本ではそういうルールだし、飛沫を減らす効果は確かにあると思うので、私はマスクをする方を選んでます。


ふむふむ。そういう判断がセキュリティ対策には大事ってことだよ。


はぁ……。どういう判断でしょうか。


要は、ルールを守るという「説明責任」と「実効性」のバランスを考えて判断するのが大事ということ。


はぁ……。まだ、よく分かりません。


 また、課長お得意の謎かけみたいな例えだなぁ。

例えば、青井さんが、マスクもせずに出歩いていてコロナに感染したとしたら、周りの人はどう思う?


まあ、あまり同情はしてくれないでしょうね。


仮にマスクのせいでなかったとしても、世の中からは批判されてしまう。会社に置き換えれば、ブランド力低下、信用失墜、株価低下などにつながるね。


だんだん分かってきました。要はセキュリティ対策のガイドラインは、コロナ対策では、公共の場ではマスクをするルールに当たるということですか?


そういうこと。ここで大事なのは、実際に感染を防ごうとすると、ただマスクしておけばいいというものではないよね。例えば「マスク」一つ取っても、いろんなマスクがあるじゃない? それになるべく密な場所に行かないとか、マスクほど明確なルールじゃないけど、リスクに応じて自分で選択している対策もあるよね。


ああ、私も、効果を気にしてマスクを素材で選んだり、通勤ラッシュをずらしたり、何かと考えて行動していますね。要は、セキュリティガイドラインに書いてあることも、結局、リスクに応じて対策を自分で考えなきゃダメってことですね。正解はどこにも落ちていない。私の中にあると。


哲学者みたいでかっこいいね。ガイドラインというのは、あくまで「ガイド」なわけで、せいぜい、セキュリティ対策の観点漏れを教えてくれるものだという程度に考えておけばいいよ。当然うちに当てはまらないものもあるわけで、それを無理にやるのは本末転倒というわけさ。


私は、ガイドラインを順守するという「説明責任」の方にばかり気を取られて、対策の本質を見失っていたと。


ガイドラインの通りやってますというのは、あくまで社内外の説明の時に有効であって、それだけで本当にリスクが低減できているわけじゃない。


脳内シミュレーションでは、課長から「漏れなく対策できてる? 青井さん信じていいの?」って言われていて、その回答が「グローバルでも、業界でも広く使われているガイドラインを順守しています」のつもりだったので、知らず知らずのうちに、全部の項目に適合することにこだわってました。


青井さんの脳内では、私はずいぶん厳しいこと言うね。


ええ。課長対策は、普通のマスクどころか、毒ガス用のマスクが必要ですね。


……。そこまで私、毒吐いてますかねぇ。


 いやいや、結構吐いてますよ。つい笑いをこらえて下を向いてしまう。

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