「変化に強い」を実現するFA用AI技術、環境や“信頼度”をAI判定し変化に追従:製造現場向けAI技術(1/2 ページ)
三菱電機と産業技術総合研究所(以下、産総研)は2021年11月25日、製造現場における環境変化や加工対象物の状態変化を予測し、稼働中のFA機器の加工速度などをリアルタイムで調整するAI制御技術を開発したと発表した。AIでの推論結果をリアルタイムで高速に反映できる他、推論結果の“信頼度”をAI判定することで、フィードバック制御を行うべきかどうかの判断も行えることが特徴だ。
三菱電機と産業技術総合研究所(以下、産総研)は2021年11月25日、製造現場における環境変化や加工対象物の状態変化を予測し、稼働中のFA機器の加工速度などをリアルタイムで調整するAI制御技術を開発したと発表した。AIでの推論結果をリアルタイムで高速に反映できる他、推論結果の“信頼度”をAI判定することで、フィードバック制御を行うべきかどうかの判断も行えることが特徴だ。
加工環境の変化に追随するAI
三菱電機と産総研では2017年からFA機器用のAI技術の共同研究を推進。2017〜2018年には生産準備工程におけるAIによる調整作業の自動化について、2019〜2020年には生産工程でのリアルタイムAIにおける生産性向上について、実績を残している。
新たに開発したAI制御技術は、変種変量生産で求められる加工環境の変化に対応しながら最適な判断が行えることを目指したものだ。製造現場では加工状況や気候や環境などによってさまざまな変化が生まれている。AIは一定の枠組みでのデータを学習し、その結果を活用する技術であるため、従来製造現場でAIを活用する場合、枠組みが徐々に変わるような環境変化に対応できずに、徐々に精度が低下するなどの問題があった。今回の技術は、こうした環境の変化を予測して追随する他、さらに“信頼度”という基準を見ることで、精度が落ちた場合は再学習を自律的に行えるようにするなど「変化に強い」を実現するAI技術だ。ポイントは「高信頼」「高速推論」「環境適応」の3つである。
推論結果の“信頼度”を判定、加工精度を51%向上
「高信頼」については、AIによる推論結果を環境と照らし合わせて“信頼度”として評価するアルゴリズムを開発しAI制御技術に組み込んだ。AIはデータによる学習をベースとしているため、機器や環境のバラつきによるデータを学習対象とすると推論結果の精度が落ちる。しかし、先に環境のバラつきによる結果のバラつき具合を学習しておくことで、最適な学習が可能で高い精度を保った自律的な制御が可能となる。
例えば、三菱電機内での実証としてCNC切削加工機への適用を行った。CNC切削加工機では、設置環境や気候などの影響などにより、CNCによる数値による制御による想定結果と、実際の加工に誤差が生じるケースがある。従来はこれらを熟練作業者が円弧軌跡を計測することにより、手動で補正パラーメータを調整してきた。しかし、今回はAIによりリアルタイムで加工誤差を推定して補正。さらに推論結果の信頼度を計算し、信頼できる推論結果になるまで調整することで結果として加工精度は、従来の人手での調整と比べ51%の向上になったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.