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ボルトの緩み対策設計者向けCAEを使ったボルト締結部の設計(9)(3/5 ページ)

部品の固定(締結)のために使用する“ボルトの設計”をテーマに、設計者向けCAE環境を用いて、必要とされる適切なボルトの呼び径と本数を決める方法を解説する。最終回となる連載第9回では、“ボルトの緩み対策”について詳しく取り上げる。

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被締結物のクリープ変形による緩み

 被締結物がパッキンを挟んだフランジの場合や、電気配線の端子によくあることですが、樹脂製の絶縁物を挟んでいた場合などでは、パッキンや樹脂材のクリープ変形による応力緩和現象によって、ボルトの軸力が時間の経過とともに減少します。この対策について少し考察します。

 材料を引っ張ったときのクリープ現象は、一般的に図7のような挙動を示します。初期段階において急速に変形が進み、これを「1次クリープ」、次に変形速度が一定となる「2次クリープ」、そして最終段階の「3次クリープ」があるといわれています。今はボルトの緩みを議論しているので、圧縮のクリープ挙動を図8のように表現してみました。圧縮なので破断はありません。そして、厚さがゼロになることもないので、2次クリープの変形速度はだんだん低下するものと考えられます。

クリープ現象:引っ張り
図7 クリープ現象:引っ張り[クリックで拡大]
クリープ現象:圧縮
図8 クリープ現象:圧縮[クリックで拡大]

 被締結物のクリープ変形による緩みの対策は、増し締めとなります。増し締めの方法や時期を規定したJISはなく、「JIS B 2251 フランジ継手締付け方法」では、“4時間以上経過した後に増し締めすること”が述べられているだけです。各社経験に基づいて、独自の基準で実施しているようです。では、4時間後に増し締めしたらそれでよいのでしょうか。その4時間後に緩みが発生していないでしょうか。また、1年後はどうでしょうか……。少し不安になりますね。クリープ変形による緩みと、増し締め効果について考察してみました。

 クリープ変形による緩みがある場合、初期締め付けの後、ある一定時間後に緩みが生じ、増し締めすると初期締め付けよりも小さなトルク(例えば、定格トルクの70[%])でボルトが回ります。そして、定格トルクになるまで増し締めします。その後、ある一定時間後に同じ作業をすると、定格トルクの90[%]でボルトが回ったとします。そして、3回目の増し締め時には定格トルクの95[%]でボルトが回ったとしましょう。では、1年後にボルトのトルクは定格の何%まで低下しているでしょうか。

 ボルトが回るトルクの測定には、「戻しトルク法」「増し締めトルク法」「マーク法」がありますが、ここでは増し締めトルク法を採用します。つまり、増し締め時にボルトが回り始めるトルクを測定し、そのまま定格トルクまで回します。

 被締結物のクリープ挙動をモデル化します。「Maxwellモデル」と「Voigtモデル」が有名です。図9に示します。クリープ変形する対象物(被締結体)に作用する荷重を時間tの関数σ(t)[N]、被締結体の変位(つまり縮み量)をε(t)[m]とします。σとεが応力とひずみでなく、力と縮み量であることに注意してください。一般化Maxwellモデルや一般化Voigtモデルなどもありますが、問題を簡単にするためにMaxwellモデルを採用します。

MaxwellモデルとVoigtモデル
図9 MaxwellモデルとVoigtモデル[クリックで拡大]

 図9のEはばねです。ばね定数をE[N/m]として、荷重と変位は比例関係になります。c[N/(m/s)]は「ダッシュポット」と呼ばれ、ダッシュポットが生じる抵抗力は、変位の時間微分にcを掛けたものとなります。式で表すと式1となります。

式1
式1

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