自動車と民生に注力する三菱電機のパワーデバイス事業、12インチ化も着々:組み込み開発ニュース(2/3 ページ)
三菱電機が2021〜2025年度の中期経営計画で重点成長事業の一つに位置付けたパワーデバイス事業の戦略を説明。産業、再エネ、電鉄などの分野をベースロードとしながら、今後は自動車と民生の分野に注力し、2020年度の売上高1480億円、営業利益率0.5%から、2025年度に売上高2400億円以上、営業利益率10%以上に引き上げる方針だ。
SiCデバイスの採用は大型EVとFCVから
自動車分野では、HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、EV、FCV(燃料電池車)などを含めたxEVの市場が拡大し、2030年には3000万台を超える見通しで、中でも小型/中型EVが最も大きく成長する。この市場見通しで重要なのが、xEVに用いられるパワーデバイスとして、大型EVとFCVでは次世代のSiC(炭化シリコン)デバイスが、成長著しい小型/中型EVとHEV/PHEVでは現行のIGBTなどSi(シリコン)デバイスが用いられるとしている点だ。ただし「高価なバッテリー削減や充電時間短縮に適したSiC市場の早期拡大や前倒しの可能性があり、そこは注視して対応したい」(齊藤氏)という。
三菱電機では、これまで自動車分野向けに累計1900万台相当のパワーデバイスを出荷した実績がある。2025年度に向けては、最新世代の薄厚化IGBTチップと冷却フィン一体構造のケースを採用した「J1シリーズ」を戦略製品に位置付け拡販を進める。J1シリーズは、モジュール面積129cm2、重量350gと、競合他社品と比べて大幅に小型、軽量化している。複数社の採用も決定しており、各社での採用車種増加によって売り上げを伸ばし、さらなる拡販にも取り組む。自動車分野における戦略製品比率は2020年度の19%から2025年度には47%まで向上する計画だ。
一方、SiCデバイスを搭載するSiCパワーモジュールについては、電動化車両の普及に向け取り組みを進めるものの、顧客ニーズに合わせてSiとSiCを使い分けて事業を強化していくことになる。三菱電機は、パワーデバイスやダイオードを全てSiC化したフルSiCモジュールでグローバルシェアトップとなるなど、顧客から高い評価を得ている高性能・高信頼性の作り込み技術や、SBD(ショットキーバリアダイオード)内蔵のSiC-MOSFETによる小型化が強みになっている。今後はトレンチ型SiC-MOSFETの高性能化や生産性向上、SiCウエハーの8インチ化による生産性向上などを進め、顧客を多様なニーズに応えられる体制を整える。
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