他社エンジンやモーター追加もOK、自由なルールでドリフト競う「D1グランプリ」:モータースポーツ超入門(10)(2/3 ページ)
クルマを横滑り(ドリフト)させて、ダイナミックな角度と速度、美しさを競うモータースポーツが「D1グランプリ」だ。ドリフトと言えば、深夜の峠道や埠頭で違法改造車がタイヤのスキール音をかき立てて走り回るイメージがあるものの、D1はれっきとしたサーキット競技だ。2002年にシリーズがスタートした、日本発祥のモータースポーツである。
トヨタ車に日産のエンジンを載せてもOK、自由な車両規則
D1のすごみは普通では考えられないようなスピードと角度でコーナーを滑るように走り抜けることにある。マシンを手足のように操るドライバーの運転テクニックもさることながら、強大なG(加速度)や遠心力、1000馬力にも及ぶエンジンパワーに耐えるマシンにも、D1のすごみを支える技術が満載されている。
改造範囲はエンジンやトランスミッション、サスペンション、ボディー、ブレーキなど多岐にわたる。それぞれに規定が設けられているものの、全体的に改造の自由度が高い車両規則となっているのがD1の特徴だ。
会場となるサーキットによっては時速200kmものスピードでドリフト姿勢に入るケースもある。それだけにマシンにかかる重力はすさまじく、ドライバーの安全性を確保するためにも、ボディー剛性の強化はドリフトマシンに不可欠な改造となる。
ボディー回りは、車体構造体の維持と強度を確保することを前提に大幅な改造が許可されている。エンジンの換装やサスペンションの変更、ステアリングの切れ角を確保するためのフレーム加工のみならず、車両前後のパイプ構造化も可能だ。また、軽量化と剛性確保を目的に、ルーフパネルとサイドドアはコンポジット製または軽合金製に、ボンネットとフェンダーはコンポジット製に変更できる。
エンジンチューニングは自由だ。本体(シリンダーブロックとシリンダーヘッド)は自動車用部品で構成しなければならないが、それ以外は特に制限はない。エンジンの交換、搭載位置の変更も可能で、他の自動車メーカーのエンジンも搭載できる。トヨタ86に日産GT-Rの「VR38DETT」(V型6気筒3.8l(リットル)のツインターボエンジン)、日産シルビアにトヨタの2JZーGTE(直列6気筒3.0lのツインターボエンジン)を載せている現役D1マシンもある。モーターの利用も可能だ。「電気駆動式車両の特別要件」に定める安全規定に適合した上で、駆動用モーターへの換装、または付加が認められている。
ターボチャージャーの大型化など過給器の改造も自由だが、亜酸化窒素ガス噴射システム(NOS)といった空気以外の酸化剤注入装置や、吸入空気以外の注入を目的とした装置の装着は禁止となっている。NOSは2013年まで搭載が認められていた。
トランスミッション、サスペンション、ブレーキの改造も極めて自由度が高い。トランスミッションはファイナルドライブともに自由に改造、交換できる。サスペンションも形式の変更、取り付け位置を含めて自由となっている。ブレーキについてもペダル、マスターシリンダー、キャリパー、ディスクの変更が自由に認められている。
ステアリング装置の変更も可能だが、ステアリングホイールとタイロッドは完全に機械的結合されていなければならない。電子制御のステアリングシステムも禁止だ。パワーステアリングについては操作をアシストする機能に限定され、後輪操舵システムも許可されていない。
D1はドリフトの角度や速度を競う競技。当たり前だが横滑り防止装置(ESP)は禁止だ。アンチロックブレーキシステム(ABS)、トラクションコントロールシステム(TCS)といった運転補助装置の装備も認められない。
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