AWSの考えるロボットは「データを基に計算し実際に行動を起こすもの」:ロボットイベントレポート(1/2 ページ)
「第1回 ロボデックスオンライン」に、AWS(Amazon Web Services) Robotics & Autonomous Services, General Managerのロジャー・バーガ氏が登壇。「ロボット工学の未来における クラウドの役割」をテーマに基調講演を行った。
2021年9月8〜10日に開催されたオンラインイベント「第1回 ロボデックスオンライン」に、AWS(Amazon Web Services) Robotics & Autonomous Services, General Managerのロジャー・バーガ(Roger Barga)氏が登壇。「ロボット工学の未来における クラウドの役割」をテーマに基調講演を行った。現在、ロボットは、複雑な組み立て、ピッキング、ラストマイル配送、捜索救助などの高度化するさまざまなタスクで広く使用されている。今回の講演では、ロボットの機能と管理を強化するためのクラウドの役割に焦点を当て、AWSの取り組みを紹介した。
なぜロボットを導入するのか、それは「労働者の生産性を高めるため」
ロボットの開発者や操縦者にとってクラウドは強力なツールの一つになっている。「AWS RoboMaker」のようなクラウドサービスを利用すれば、シミュレーションを通じて開発者はロボットをテストすることが可能だ。機械学習や動画ストリーミングなどを追加することや、生産されたロボットの管理や監視をクラウドで行うことで有用性を高めることができる。
ロボットの定義について、AWSでは「データを基に計算し実際に行動を起こすもの」と非常に広い、大局的な見方をしている。産業用に応用できるロボットは、ドローン、ロボットアーム、地上を移動する移動ロボット(モバイルロボット)の3つに分類でき、中でもAWSは移動ロボットに大きな関心を示している。
移動ロボットはここ2〜3年で数量が10倍に拡大するとみられ、アマゾン(Amazon.com)の配送センターのように物流や配送で標準的に利用されるようになると推定している。その理由は、過去30年以上にわたり上昇し続けている人件費にある。AWSは、500社を対象に「なぜロボットを導入するのか」というアンケートを実施した。
それらの回答で最も多かったのは「労働者の生産性を高めるため」だった。単純な仕事をロボットに任せることで、技術や判断力を求められる仕事に人間が時間を使うことができる。その次に多かったのは「製品やサービスの品質を向上させるため」だった。アマゾンが通信販売を開始した当初は商品の発送に4日かかっていたが、それから2日、当日中となり、現在ではドローンの登場によって数時間のレベルにまで短縮することかできている。そして3番目に多かった回答は「業務の容量を増やすため」となった。ロボットを使えば、現在の運用機器と投資をさらに活用できる。つまり、既に行ってきた投資が増強できることになる。
移動ロボットの活躍の場はeコマース企業や3PLs(サードパーティー・ロジスティクス)であり、現在では物流や配送にロボットを用いない方が珍しくなっている。しかし、実際に物流や配送の現場で自動化可能な設備のうち自動化されているのはわずか2%といわれる。自動化が期待されるプロセスにはパレットコンベヤーをはじめ、倉庫内で見かける装置では電動のローリフトやフォークリフトなどがあり、今後3〜10年で需要の拡大が見込まれている。バーガ氏は「このように数年前までは手作業がほとんどだったロジスティックは、将来的には自動化が進んで手作業で行う工程が減少していく」とみている。
これらロボット導入の背景をまとめると、まずは経済的な理由があり、特に物流管理や倉庫での商品移動において顕著にみられる。次に、従業員の生産性を向上し、既に投資したものの運用能力を向上させる狙いがある。そして、新たな体験に対する消費者の要求があり、多くの企業においてこれらと関連した新技術の導入が加速するとみられている。
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