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スマート工場化の現在地、「期待する効果を得られた」企業はようやく過半数にスマートファクトリー(1/2 ページ)

取り組みが広がるスマート工場化だが、実際の効果はどれだけ得られているのだろうか――。本稿ではTechFactoryの「『つながる工場の現状と課題』についての読者調査」の結果から、スマート工場の現在地について紹介する。

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 ユーザーニーズの多様化や製造現場の人手不足などによりスマート工場化への取り組みは広がりを見せている。大手製造業を中心に何らかの取り組みを進める企業が多数派になってきている状況だが、実際に成果を出せている企業はどれくらいいるのだろうか――。

 MONOistと同じくアイティメディアが運営する製造業のための製品・サービス情報サイト「TechFactory」では2021年6〜7月、「つながる工場の現状と課題」をテーマとしたアンケート調査を実施した。本稿ではこの調査結果の一部を引用し、過去の結果と比較しながらスマート工場の現在地について紹介する。

「つながる工場の現状と課題」に関する調査

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約7割が「つながる工場」に向け前進、新型コロナは半数が「影響なし」

 製造業のための製品・サービス情報サイト「TechFactory」は2021年6〜7月、「つながる工場の現状と課題」をテーマとしたアンケート調査を実施。“つながる工場”や“スマートファクトリー”への取り組みはどこまで進でいるのか。


「つながる工場」への取り組みはより現実的に

 「TechFactory」の「つながる工場の現状と課題」についての読者調査は、MONOist、EDN Japan EE Times Japanの読者を対象に2015年から毎年実施されており、スマート工場化の進捗状況や課題などを示してきた。2021年の調査では、2021年6月21日〜7月12日の期間に556の回答を集めている。

 その中で「つながる工場」に取り組んでいるとした回答は60.1%、「取り組む予定はない」とした回答は39.9%となった(図1)。

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図1 「つながる工場」への取り組み状況(クリックで拡大)出典:TechFactory「『つながる工場の現状と課題』に関する調査」

 実は、この「取り組んでいる」という回答の比率は、わずかだがここ数年減少傾向にある。2020年調査における同様の設問で「取り組んでいる、または取り組む予定」とした回答は63.1%だった。また、2019年調査の同様の設問では、「取り組んでいる、または取り組む予定」とした回答が70.4%だったことを考えると、2年間で約1割減少していることになる。

 その要因としては、スマート工場化への取り組みがより具体的なものになり、現実的に見据える企業が増えてきたからだと推測する。

 2021年版調査では、「つながる工場」に取り組まない理由(図2)として挙がっているのは、「対応する技術者がいないから」(22.4%)、「そのうち対応を考えるが今はその時期ではないと考えるから」(21.0%)、「今の業務に効果があるとは思えないから」(18.6%)、「今の業務で考える権限がないから」(17.1%)などである。

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図2 「つながる工場」に取り組まない理由(クリックで拡大)出典:TechFactory「『つながる工場の現状と課題』に関する調査」

 これら上位の項目は、多少の前後はあるものの、基本的にはそれほど大きな変化はない。ただ、特徴的な動きを占めているのが4位に入っている「今の業務で考える権限がないから」である。この回答は2019年調査では回答比率がわずか7.6%だったが、2020年調査では15.1%に上昇。2021年調査では17.1%へとさらに増加している。こうした回答の変化を見ると、各企業でスマート工場化を推進する組織体制が明確化されつつあり、推進組織や権限などの役割分担が進んできていることが分かる。

 “見極め”が進んだことにより、時期の見定めや費用対効果を具体的に検討する中で、現在の取り組みをある程度絞り込んだり、集中させたりするような動きなども出ていることが推測できる。

 また、もう1点特徴を挙げるとすると「コストが高いから」とした回答比率が下がっているということがある。2019年調査ではこの回答の比率は19.0%、2020年調査では21.6%だったが、2021年調査では14.3%まで下がっている。これには、スマート工場化で必要となる、典型的なツールやソリューションの形が見えつつあることから、これらに対応した機器やツールがパッケージとして用意されてきたことが要因だと考えられる。民生技術などを活用した安価なソリューションも増えつつあり、コスト問題は依然として高い関心事項ではあるものの、徐々に障壁としての位置付けを下げている。

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