乾坤一擲の賭けに勝った観測ロケット「MOMO」、2年ぶり打ち上げ成功にみる実力:宇宙開発(2/5 ページ)
ロケットベンチャーのインターステラテクノロジズは2021年7月、観測ロケット「MOMO」の打ち上げを約1年ぶりに実施した。7月3日の7号機、同月31日の6号機と2機連続での打ち上げ成功という成果は、同社にとって乾坤一擲の賭けともいえる機体の全面改良という決断によるところが大きい。
新型の「MOMO v1」ではここが変わる!
新型の「MOMO v1」は、大きく分けて以下の4点が改良された。
- エンジンシステム
- 機体の艤装(ぎそう)
- アビオニクス
- 地上支援設備
エンジンシステム
エンジンは、5号機でノズルが破損したため、その対策として、一部の材料をSFRP(シリカ繊維強化プラスチック)へ変更した。さらに、従来(v0)はノズルがむき出しになっていたが、アルミ素材の外筒でカバーし保護するようにした。同時に、点火器の冗長化や、インジェクタの改良なども行われている。
機体の艤装
機体の艤装では、バルブと配管をユニット化し、組み立て作業を効率化した。また機体外配管の取り外しを不要にした他、射場での高所作業を削減するなど、打ち上げ時の運用性も向上。前日や当日の作業時間の大幅な短縮を実現した。
アビオニクス
アビオニクスは、開発中の超小型衛星用ロケット「ZERO」の技術実証も兼ねて、改良を行った。新たにSoC(System on a chip)を採用し、飛行経路制御の精度を向上。さらに機内通信の冗長性を向上させ、高信頼性化も計った。
地上支援設備
地上支援設備も、今回刷新した。耐候性やメンテナンス性が向上したことで、設備の点検・整備作業が大幅に短縮、打ち上げ前の整備作業にかかる工数を50%以上も削減することができた。これで、高頻度の打ち上げにも対応可能になったという。
なお、v1ではエンジンの推力が従来の1.2トンから1.4トンに強化されているが、機体重量も増大しているため、ペイロード重量は30kgのままで変わらない。機体の全長や直径もほとんど変わらないため、外観からだと違いは分かりにくい。
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