CO2排出削減だけじゃない、環境のためにやるべきこと:いまさら聞けない自動車業界用語(16)(2/3 ページ)
今回は近年、非常に注目されていて、自動車関連企業の各社が積極的に取り組んでいる「環境」について説明します。
CO2を排出しない電気の代表例は太陽光や風力などの地球資源を利用した再生可能エネルギーです。たくさんの企業で、工場の屋上に太陽光パネルを配置するなど自社内で電力を活用する取り組みが行われています。ただ、多くの場合、全ての電力を自社内での再生可能エネルギーによる発電で賄うことは困難です。不足分の電力を、電力会社のグリーン電力で調達することもCO2排出削減の方法の1つです。
また、社用車や物流で使用する車両を内燃機関車からEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などの環境性能の高い車に変えることも効果があります。「エネルギーをクリーンにする方法」は従来と比べるとどうしてもコスト高になる傾向があり、費用と削減量の効果や目標を鑑みて計画し実施する必要があります。
2つ目は「エネルギーの使用量を少なくする」という施策です。生産時に使用されるエネルギーが少なければ、その分排出されるCO2が削減されます。エネルギー効率の悪い古い設備を新しい設備に変えることで使用電力を下げる他、始動前の設備の昇温時間を季節で見直して、気温の高い夏場は時間を短縮するなど工場の現場で知恵を出し合い、カイゼンしていきます。
エネルギー使用量を少なくするということは生産性を上げることです。これまで日本の製造業が得意としてきた現場レベルのカイゼンの積み重ねは、環境への取り組みにおいても重要な手段の1つになります。ただし、使用量を少なくしてもゼロにはできません。電力使用量を抜本的に減らすことは難しく、クリーンなエネルギーの利用と合わせて目標を達成していくことになるのでしょう。
工場から出る水を汚さない
企業の社会的責任として、環境を汚染してはいけません。この点も非常に重要です。自動車関連企業の工場では、部品を作る過程、特に機械加工などの工程で大量の水を使用します。洗浄や冷却に使われた水は環境を汚染する物質を含み、そのまま排出することはできません。国の定める水質汚濁防止法に基づき、適切な排水処理を行い、有害物質を規定内の数値に収める義務があります。
違反すれば法令違反となりますし、水質汚染事故が起きれば地域住民や周辺の環境へ多大な悪影響を与えるため、企業は排水処理基準を順守する必要があります。もちろん、工場や工程の設計段階で、適切な排水処理になるよう設備仕様に織り込まれています。しかし、設備が突発で故障した場合や大雨などの自然災害が起きた場合は、環境事故の可能性が高まります。事故の可能性を発見した際にはいち早く報告し、被害を最小限に食い止めることが重要です。
材料から環境負荷低減が求められる
環境に影響を与えるのは工場だけではありません。自社の作る製品が、人の健康や生態系に影響を及ぼす可能性のある環境負荷物質を使用していないかにも気を配る必要があります。環境負荷物質の規制は法律で定められており、代表例としてEUの「REACH規制」があります。
コンプライアンス上の観点から環境負荷物質の規制への対応は不可避であり、決められた期限までに確実に対処する必要があります。化学物質ごとに規制が改正されるため、対象の範囲が改訂されると上流の工程で使われている材料が変更され、非常に多くの製品に影響を与えます。実務者としては、工数がかかり期限が厳守のため、大変な変化点となりますが、会社として社会的責任を果たすべく、必ず取り組まなくてはならない課題です。
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