デジタルがフィジカルを変える、DXを加速するPTCのソリューションとSaaS戦略:LiveWorx 2021(1/2 ページ)
オンラインで開催されたPTCの年次ユーザーイベント「LiveWorx 2021」において、同社 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン氏が「Digital Transforms Physical」をテーマに講演を行った。本稿では、日本のメディア向けに実施されたラウンドテーブルで得た情報などを交えて、同講演の内容をダイジェストでお届けする。
オンラインで開催されたPTCの年次ユーザーイベント「LiveWorx 2021」において、同社 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏が「Digital Transforms Physical」をテーマに講演を行った。本稿では、日本のメディア向けに実施されたラウンドテーブルで得た情報などを交えて、同講演の内容をダイジェストでお届けする。ちなみに、今回のLiveWorx 2021は2021年3月から毎月新たなコンテンツをオンデマンド配信する形式がとられた。
PTCの戦略は“デジタルがフィジカルを変える”という言葉に集約される
講演の冒頭、へプルマン氏は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックによって、多くの企業がこれまで以上にデジタルの大きな価値を認識するようになり、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが何年分も加速した」と述べる。実際、PTCが顧客企業とビジネスを展開する中、デジタル戦略を製品ライフサイクル全体で活用している企業は、このコロナ禍においても着実に収益を上げて事業を成長させているという。
PTC自身も近年、“デジタルを使ってフィジカルな世界を変革する”という使命の下、企業のDX推進を支援する取り組みを加速させており、フィジカルな製品設計、製造、サービスなどを変革するためのデジタル技術に関する製品ポートフォリオを強化。「PTCは、デジタル技術を取り入れてビジネスのフィジカルな側面を変革することで真の優位性が得られる、ということを顧客企業に訴えている。PTCの戦略は“デジタルがフィジカルを変える”という言葉に集約される」(へプルマン氏)。
講演では、大きく「デジタルがフィジカルをどのように変えていくのか」「デジタルがどのようにそれ自身を変えていくのか」「PTCがどのように自らを変えていくのか」についての考えが示された。
デジタルがフィジカルをどのように変えていくのか
「デジタルがフィジカルをどのように変えていくのか」では、まず、デジタルでフィジカルなものを設計、シミュレーションし、デジタルでフィジカルなものを生成するCADについてフォーカス。へプルマン氏は「CADは、われわれの多くが経験した最初の真のDX技術の1つであり、広く普及している技術でもある」と述べ、DX戦略の一環としてCAD(Creo、Onshape)で実現できることを紹介した。
具体的には、3D CADで高い忠実度を誇る製品の3Dモデルを作り、実物を手にする前にAR(拡張現実)で詳細を確認したり、ジェネレーティブデザインのようにツールからアイデアを得てフィジカルなものを設計したり、デザインしたものが現実世界で本当に機能するのかをリアルタイムにシミュレーションしたりといった活用だ。また、全ての製品定義を3Dモデルに入れる、MBD(Model Based Definition:モデルベース定義)の手法を用いて“3Dを正とする設計”を実践することで、3D CADで設計したものをわざわざ2D図面に変換するといったムダや損失を排除できるようになる。こうして完成したデジタルの仕様書に基づき、従来工法や3Dプリンタなどによってフィジカルな製品を生み出すことができる。
さらに、デジタルでフィジカルを管理することもDXを推進する上では重要なポイントとなり、PLM(Windchill、Arena)がその役割を果たす。へプルマン氏は「PLMは、製品の構成を理解し、異なるシステム間で全てのデータを関連付けるバックグラウンドの頭脳となる」と説明する。また、デジタルがフィジカルを変えるという究極の状態はデジタルツインによって達成されるとし、へプルマン氏は「PLMはフィジカルな製品を含む複数のソースから情報を関連付け、データストリームの処理方法を調整することで、フィジカルな世界で起きていることを、リアルタイムにデジタルで映し出すことができる」と述べる。
また、デジタルとフィジカルを結び付け、デジタルがフィジカルを増強するテクノロジーとして、IoT(モノのインターネット/ThingWorx)とAR(Vuforia)も重要な要素となる。講演では「ThingWorx」が提供するさまざまな機能に基づき、IoTによってデジタルがフィジカルを感知し、翻訳し、監視し、予測し、そして最適化できることを紹介した。また、これらのクローズドループの継続的なプロセス改善を推し進めるためのソフトウェアとして「Digital Performance Management」を紹介。「工場などにおける各種プロセスを監視して、最大の障害を特定し、その障害の時間的損失などを掘り下げることが可能だ。さらに、損失理由のパレート図などを作成して問題の本質を理解し、状況を改善するための変更を実施して、それを追跡できる。リアルタイムのプロセス監視ダッシュボードを使って変更の効果を検証することも可能だ」(へプルマン氏)。
一方、ARについて、へプルマン氏は「IoTと多くの類似点があるため、私はARのことを“人間のためのIoT”と呼んでいる」と語る。AR技術を使えば、デジタルな情報をフィジカルな世界の一部であるかのように認識できるようになるため、フィジカルな体験を拡張することが可能となる。同時に、デジタルはコンピュータビジョン技術などによってフィジカルな環境を正確に認識することで、デジタル情報を正しく配置するとともに、AR空間内でフィジカルな作業を導くこともできる。その他にも技術伝承やリモートサポート、さらには「フィジカルな作業現場全体をデジタルで仮想化し、世界中のどこからでも作業できるようにすることも可能だ」(へプルマン氏)という。
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