メルセデス・ベンツがEVオンリーに舵を切る、2030年までに5兆円以上を投資:電動化(1/2 ページ)
ダイムラーがメルセデス・ベンツブランドで2025年以降に発売する新型車を全てEVとする事業戦略を発表。2022年までに全てのセグメントでEVを投入するとともに、年産200GWh以上の車載バッテリーを生産するための工場ネットワークの構築を進めるなど、2030年までにEV関連で400億ユーロ(約5兆2000億円)以上を投資する。
ダイムラー(Daimler)は2021年7月22日(現地時間)、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)ブランドで2025年以降に発売する新型車を全て電気自動車(EV)とする事業戦略を発表した。2022年までに同ブランドが展開する全てのセグメントでEVを投入するとともに、年産200GWh以上の車載バッテリーを生産するための工場ネットワークの構築を進めるなど、2022〜2030年にかけてEV関連で400億ユーロ(約5兆2000億円)以上を投資する計画。また、満充電からの走行距離が1000km以上となるEVのコンセプトカー「VISION EQXX」を開発しており2022年に公開する予定だ。
今回発表したEV関連の事業戦略は「技術計画(Technology Plan)」「生産計画(Production Plan)」「人員計画(People Plan)」「財務計画(Financial Plan)」の4つに分かれている。「技術計画」のうち車両アーキテクチャでは、2025年に3つのEV専用アーキテクチャを発表する方針だ。1つ目の「MB.EA」は、メルセデス・ベンツブランドのほぼ全ての乗用車に該当する中型〜大型をカバーする。2つ目の「AMG.EA」は、スポーツ・レースブランドであるメルセデスAMG(Mercedes-AMG)の顧客を対象としたパフォーマンスEV専用のプラットフォームとなる。そして3つ目の「VAN.EA」は、バンや小型商用車向けのEVプラットフォームだ。
EVパワートレインの開発体制は、企画から開発、購買、生産までを一手に引き受ける垂直統合を目指す。「eATS 2.0」などの自社製モーターに加えて、買収を決めた英国YASAの軸流束モーター技術を基にした次世代技術の開発にも取り組む。ただし、世界最大のNEV(新エネルギー車)市場である中国に多数あるEV関連サプライヤーの力も活用していく方針も示している。
年産200GWh以上を目指す車載バッテリーの生産は、グローバルのパートナーと共同で設立する8つの工場で行う計画。これらの工場で生産する次世代の車載バッテリーは高度に標準化されており、メルセデス・ベンツブランド車両の90%以上に適用可能であるとともに、全ての顧客に個別のソリューションを提供できる柔軟性を備えるという。また、EV時代においても欧州が自動車産業の中心であり続けることを視野に入れ、将来的なバッテリーのセルやモジュールの開発に向けて新たな欧州のパートナーと提携する予定である。次世代バッテリー技術としては、パートナーのSilaNanoとの協力でシリコンカーボン複合材を負極に採用してエネルギー密度の向上を目指す。全固体電池の開発でも、パートナー企業との協業を進めている。
充電ネットワークでは、2021年後半の新型EV「EQS」の市場投入に合わせて、認証や支払い処理などの手間をかけずにEVへの充電を行える「プラグ&チャージ(Plug & Charge)」のサービスを開始する。また、メルセデス・ベンツブランドの充電ネットワークである「Mercedes me Charge」は現時点で世界53万基の充電器を利用可能だ。さらに、シェル(Shell)との提携により、欧州、北米、中国の3万基の充電器(これらのうち急速充電器が1万基)が2025年までに加わる見込みだ。
VISION EQXXは、自動車専用道路を走行する際のバッテリー消費量を100km当たりで10kWh未満にすることを目標に開発が進められており、その結果として、満充電からの走行距離は1000km以上となる。メルセデス・ベンツのF1ハイパフォーマンスパワートレイン部門(HPP)を含めた複数の分野にまたがるチームが開発を進めている。
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