「コスト」を考える上で絶対に欠かせない6つの視点:アイデアを「製品化」する方法、ズバリ教えます!(9)(1/3 ページ)
自分のアイデアを具現化し、それを製品として世に送り出すために必要なことは何か。素晴らしいアイデアや技術力だけではなし得ない、「製品化」を実現するための知識やスキル、視点について詳しく解説する連載。第9回は、製品化に欠かせない「コスト」に関する考え方や実践的なアプローチを一連の流れでお届けする。
「コスト」に関してはこれまでも断片的にお話してきたが、製品化においてコストを意識しながら設計を進めることはとても大切であるため、今回は次の項目を一連でお伝えする。
- 製品のコスト構成
- 製品コストに含まれるもの
- 目標コストを決める
- コストを管理する
- 部品コストの見積もり
- 部品コストの調整
1.製品のコスト構成
製品のコスト構成は、図1のようになっている。連載第3回にも類似の図が掲載されているが、図1はそれを詳細に分解したものだ。
まずは、「製造原価」「販売費+一般管理費」「利益」に別れていることに注目したい。設計者の開発設計やそれにかかわる出張費用、試作品の費用などは一般管理費に含まれる。製造原価は「間接費」と「直接費」に別れる。図1の右端に記載されている各項目を見ると、その区分けは理解しやすい。
これらのコストの中で、設計者が管理できるコストは「金型費」と「部品コスト」である。金型費は一般的に2年間で減価償却されるため、その期間の製品の生産台数で割った金額がこの構成表に入る。部品コストはもちろん製品に使われる員数を掛け、全部品を合計したコストとなる。本稿では主に部品コストに関してお伝えする。
ここで大切なのは、製品を構成するこれら多くの費用の中で、“金型費と部品コストは設計者しか管理することができない”という点である。つまり、設計者がこの管理を怠ると、いくら売れても損をする製品になりかねないのだ。
2.製品コストに含まれるもの
製品のコストは製品本体のコストだけではない。私たちがある製品を購入すると製品本体以外にも次のものが含まれている。
- 梱包材(カートンとクッション)
- ポリ袋
- 保護シート
- 取扱説明書やその他の紙類
- 付属品(電池、消耗品など)
これらももちろん製品のコストとして、図1に示したコスト構成の中の部品コストに含めなければならない。コストが厳しい製品の場合、これらを忘れてしまうと後からコストオーバーしてしまい、コストダウンを強いられることになる。
中でも、取扱説明書は生産台数が少ないと予想外に高額になるので注意したい。印刷代は段取り費用が多くを占めるため、印刷部数が少ないと1冊当たりが高額になるのだ。また、印刷物には版代が必要となる。金型費と同じ扱いだ。印刷部数の少ないものには、版を必要としない印刷方法もあり、またWebで公開すると製品のコストには入らない。
製品本体のコストであるにもかかわらず、忘れがちなものとしてラベルがある。よく製品の裏側に貼ってあるものだ。これも印刷物であるため、生産台数が少ないと高額になるので注意したい。また、これも版代が必要となることを忘れてはならない。ちなみに、カートンの印刷も同様だ。
設計を進めていると、製品コストは必ずアップしていく。設計を始める当初には気付かなかった部品が追加になったり、対策部品が必要になったりするからである。対策部品は、法規制の認証取得をしなければならない製品でよく必要になる。設計過程では、試作品を作製し法規制を満足させることができるかの確認試験を行い、満足させることができなければ製品のコストが上がらないような方法で設計修正を行う。しかし、量産間近になってもその法規制をクリアできなかったときは、コストアップを前提に対策部品を取り付けて、何とか法規制を満足させるしかないことが多い。このような事情や対応により、製品コストはアップしていくのである。よって、筆者は設計開始当初の目標コストの中に、コストアップを想定してあらかじめ “予備”の費用を入れておくことにしている。
部品は単品で購入する場合と、複数部品を組み立てた状態(組立部品)で購入する場合がある。組立部品で購入する場合は、もちろんその組立部品のコストを部品表に入れる。図2の場合、「ボトムカバー組立」の項目から下の3つの部品はその構成部品であるため、グレーアウトされた値は部品表の一番下の合計には入れない。この部品表は、金型費や設計進捗(しんちょく)の管理に用いることもあるため、これらの3つの部品は記載しておく必要がある。
ここでは、製品のコストは製品本体のコストだけではないということを理解してほしい。
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