ワクチン輸送用保冷ボックスから出てきた「TOUGHBOOK」は−20℃でも操作可能:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
パナソニック モバイルコミュニケーションズが頑丈フィールドモバイルとして展開する「TOUGHBOOK(タフブック)」の新製品として、7.0型Androidタブレット端末の「FZ-S1」を発表。小型軽量化と処理性能の向上を図るとともに、HACCP対応に向けた冷凍・冷蔵倉庫内での作業に対応可能な耐低温性能を実現し、防塵・防滴・防水性能も高めた。
パナソニック モバイルコミュニケーションズは2021年5月19日、オンラインで会見を開き、頑丈フィールドモバイルとして展開する「TOUGHBOOK(タフブック)」の新製品として、7.0型Androidタブレット端末の「FZ-S1」を発表した。同年5月20日に発売する。価格はオープンだが、市場想定価格は16万5000円から。FZ-S1を含めたタフブックシリーズ全体としての年間の国内生産台数は12万台を予定している。
頑丈ノートPCとして1996年に「CF-25」を発売してから25周年を迎えるタフブックだが、ノートPC型だけでなく、タブレット端末やハンドヘルド端末も展開してきた。7.0型Androidタブレット端末の従来モデルとしては2016年6月発表の「FZ-B2」があるが、FZ-S1は小型軽量化と処理性能の向上を図るとともに、HACCP対応に向けた冷凍・冷蔵倉庫内での作業に対応可能な耐低温性能を実現し、防塵(じん)・防滴・防水性能も高めた。
会見に登壇したパナソニック モバイルコミュニケーションズの土田淳氏(左)と武藤正樹氏(右)。両氏が手に持っているのが「タフブック」の新製品となる7.0型Androidタブレット端末「FZ-S1」だ(クリックで拡大) 出典:パナソニック
重量で20%、厚さで10%の小型軽量化を実現
まず、小型軽量化では、FZ-B2が重量540g、厚さ18mmだったのに対して、FZ-S1は重量426g、厚さ15.9mm。重量で20%減、厚さで10%減となった。「放熱対策に用いてきたヒートパイプを放熱シートに替えるなどして、重さで数g単位、厚みでコンマ数mm単位を積み重ねて実現した」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ プロジェクトマネジメント部 プロジェクトリーダーの土田淳氏)という。また、現場での使いやすさを追求した独自のグリップデザインを背面に採用して持ちやすさを向上し、手が滑る、落とすといったことが起こりにくくなっている。
FZ-S1の処理性能については、メモリ/ストレージ性能、操作感、グラフィック処理、CPUなどの総合性能で約1.8倍を実現。Android OSのバージョンは、Android 6.0.1からAndroid 10、CPUはインテルの「Atom x5-Z8550」からクアルコムの「SDM660」、メモリ容量は2GBから4GB、ストレージ容量(eMMC)は32GBから64GBに変更された。土田氏は「放熱を考慮した設計により、長時間使用しても製品の温度上昇による性能劣化は生じにくくなっている」と語る。
頑丈性能では、米国国防省が定めるMIL-STD-810H準拠の落下試験(120cm、動作時、26方向、合板)と耐振動試験をクリアしている。落下試験については、パナソニックがタフブックで定める“頑丈”の要件の1つに定める150cm、動作時、6方向、コンクリートというより厳しい条件も満たす。防塵・防滴・防水性能では、FZ-B2が防塵・防滴のみを満たすIP65準拠だったのに対して、FZ-S1は防水試験もクリアすることでIP65/67準拠となった。
動作温度範囲についても、FZ-B2の−10〜50℃に対して、FZ-S1は操作可能温度で−20〜50℃、保管温度で−30〜70℃に対応。特に、−20℃の環境下でも操作可能な点は、食品物流分野でHACCPに対応するコールドチェーンを実現する際の冷凍・冷蔵倉庫内での作業に対応できることを意味しており、物流・運輸、流通・小売向けのへの展開強化につながる特徴といえそうだ。実際に、会見でFZ-S1を披露する際には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンなど医薬品の定温輸送向けの保冷ボックス「VIXELL」の中から、画面が点灯して動作状態にあるFZ-S1を取り出すというパフォーマンスを見せた。
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