マカフィーはセキュリティのプラットフォーマーへ、法人部門は事業売却で独立:IoTセキュリティ
マカフィーが2021年の事業戦略を説明。これまでも重視してきた「デバイスからクラウドまでの保護」に「クラウドファースト」や「将来を見据えたセキュリティ運用の構築」を加えて、同社のセキュリティソリューション「MVISION」を、クラウド、ネットワーク、エンドポイントを全面で守るプラットフォームとして展開していく方針だ。
マカフィーは2021年5月12日、オンラインで会見を開き、2021年の事業戦略を説明した。これまでも重視してきた「デバイスからクラウドまでの保護」に、「クラウドファースト」と「将来を見据えたセキュリティ運用の構築」を加えて、同社のセキュリティソリューション「MVISION」を、クラウド、ネットワーク、エンドポイントを全面で守るプラットフォームとして展開していく方針だ。
同社 社長の田中辰夫氏は、2020年に起こったコロナ禍を受けた2021年のセキュリティ市場動向として「新しい職場環境」「新たな脅威と敵」「新たなイノベーション」「新たな緊急性」の4つを挙げた。「新しい職場環境」では、リモートワークの導入が進むことでZoomやTeams、WebExなどのコラボレーションサービスの利用が急増し、遠隔地での作業が従来比で3〜4倍となり、非管理端末の利用も倍増していることを指摘。世界でインターネットに接続されるデバイスも350億台まで増えているという。リモートワークを行う従業員が、自宅をそれぞれ1つのオフィスとして利用するようになるなど大きな変化が生まれている。
これら「新しい職場環境」を実現するために利用されるクラウドも、「新たな脅威と敵」から狙われている。クラウドネイティブな脅威がこの1年間で630%増加し、1分当たりに検知されるサイバー上の脅威は、2020年第2四半期の419件から2020年第4四半期には618件まで増えている。コロナ禍に対応すべく導入した「新たなイノベーション」がきっかけになっているわけだが、その一方で違反を検出して封じ込めるまでの日数が平均280日もかかっていたり、2021年のサイバーセキュリティ人材が350万人不足したりなど「新たな緊急性」も生まれている。
MVISIONは、これらのセキュリティ市場動向に対応するセキュリティプラットフォームとなっている。デバイスやユーザーの場所に依存しないセキュリティ提供の仕組みであるSASE(Secure Access Service Edge、サシー)として利用可能な「MVISION UCE(Unified Cloud Edge)」のさらなる機能拡充を図るとともに、AWSやAzure、GCPなどのIaaSやPaaSを統合管理して守るCNAPP(Cloud-Native Application Protection Platform)となる「MVISION CNAPP」、エンドポイント保護の状態を可視化する「MVISION XDR(eXtended Detection & Response)」などを提供できるという。
なお、マカフィーの米国本社は2021年3月8日(現地時間)、同社のエンタープライズビジネスを投資会社のSTG(Symphony Technology Group)に約40億米ドル(約4380億円)で売却することを発表している。田中氏は「この売却契約は2021年末までに締結見込みで、その際にマカフィーの法人部門は、エンタープライズビジネスに特化したプライベートカンパニー(株式非公開企業、現在のマカフィーは2020年10月にNASDAQ市場に再上場している)として新たに生まれ変わる」と述べている。
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