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イノベーションは制約からの解放で生む、ソニーが捉える5分野11種類の制約とはイノベーションのレシピ(1/2 ページ)

オンライン展示会「バーチャルTECHNO-FRONTIER2021冬」(2021年2月2〜12日)のオンライン講演にソニー 主席技監の島田啓一郎氏が登壇。「ニューノーマル時代の生活文化と顧客価値と技術革新と産業創出」をテーマとし、コロナ禍のよる生活の変化とそれに伴い重要性を増す技術について語った。本稿ではその内容を紹介する。

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 オンライン展示会「バーチャルTECHNO-FRONTIER2021冬」(2021年2月2〜12日)のオンライン講演にソニー 主席技監の島田啓一郎氏が登壇。「ニューノーマル時代の生活文化と顧客価値と技術革新と産業創出」をテーマとし、コロナ禍のよる生活の変化とそれに伴い重要性を増す技術について語った。本稿ではその内容を紹介する。

「3Rテクノロジー」と「自動化」

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ソニー 主席技監の島田啓一郎氏

 島田氏は「技術の進歩と産業の創造、顧客価値、暮らし文化には方程式ともいえる関係がある」と訴える。例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による現在をみると、感染症の拡大防止によるさまざまな措置により顧客による体験価値は減少を余儀なくされている。一方で経済活性化を図ろうとすれば、感染リスクが高まり、実際に感染者の数などもこれらの規制を強めたり緩めたりする中で増減を繰り返した状態がある。

 現在の技術をベースに考えた場合、これらは相反関係となり、両者を成り立たせるのが難しい状況だ。これに対し島田氏は「これらを両立させる技術や新事業、事業転換の可能性を探ることが重要だ。そのために必要となるものが、現在注目されている第4次産業革命における中心技術であるIoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AI(人工知能)、ロボットなどを駆使した取り組みだ」と語る。そして、ソニーではこれらを踏まえた上で重要になる技術の方向性として「Reality(リアリティー)」「Realtime(リアルタイム)」「Remoto(リモート)」と「Autonomous(自動化)」を挙げている。

 コロナ禍での感染対策は不要不急の外出自粛、大勢集まっての飲食の自粛などが効果的だとされている。もともと人間はリアルな出会いが好きで、群れたい生物であり、その特徴がこれまでDX・オンラインの普及に限界をもたらした。しかし、これは、リアル以外の場面で顧客活用ができていなかったためだ。そのため、コロナ対策のための緊急事態宣言などの発出は経済に大きな悪影響を与えた。この問題を解決するには「顧客価値の分析から行う必要がある。顧客にとって『何がうれしいか』『何がうれしくないか』を考えれば、技術革新により代替案を発見し、事業を生む可能が高まる」と島田氏は考え方を訴える。

「情報作業の容易性」「物理作業の容易性」「経済性」という意味

 ニューノーマル下での生活は「3密」を避けるとともに、リアルの出会いの機会を減らしている。リアルの出会いはどれだけの人と会ったかという点と、どれだけ遠くの場所に移動したかという「人数」と「移動面積」という2つの指標を設定できる。この2つが抑制されると経済の活性化は難しく人としてストレスがかかる。そのため、現状は感染拡大を防ぎながらこの2つの行動を最低限容認するというバランスをとりながら実施しているところだといえる。ただ、このバランスは、感染状況によって変わってくる。経済を活性化しながら感染リスクを減らすという行動を両立させるためには、リアルな出会いと、3密というものが人間にとってどういう意味を持つのか、あらためてその価値を分析する必要がある。

 その結果得られたのが「言葉にならないことも伝わりやすい」「共感してもらいやすい」「人に直接触れることができる」「便利なのに安い」などだ。結果をまとめると「情報作業が容易」「物理作業が容易」「経済性がある」の3つに大まかに分類できる。

 情報作業の容易性については、「明示的な情報作業」と「暗示的な情報作業」が含まれる。「明示的な情報作業」は「リアリティー」を増やすことである程度カバーできる。具体的には、4K/8K、大画面、3D/VR/XR、リアルタイムの映像伝送、通信遅延の短縮、ユーザーエクスペリエンスの向上などによる対応である。「ただ、現状のテレビ会議システムや、リモート通信技術はまだユーザーエクスペリエンスの面で、リアル環境の代替手段になるほど育っていない」と島田氏は現状の問題点を指摘する。

 一方で「暗示的な情報作業(超感性体験)」は「言葉で言いにくい内容」であり、3Rの技術によりある程度は近づくことはできるが「雰囲気を伝える」「察する」などの感性価値や感動については再現することが非常に難しい。「現在まさに研究中であり、今後も続けていかなければならない領域だ」と島田氏は語る。

 「物理作業の容易性」については、よりリアリティーを増したリアルタイムのリモート技術や自律ロボットがあれば遠隔での代替作業や作業指示で行える可能性がある。人に対する物理作業(人のいる場所に行かないと触れられない)は、基本的には代替できないが、テレプレゼンスやテレイグジスタンスによるリモートで一部は代替が可能だ。食べるという行為なども基本的には難しいが「料理や食材の配達により、近づくことはできる」(島田氏)。

 島田氏は「これらにように、技術による暮らしの変化は、過去を見てもたびたび見られた」と述べる。例えば、写真撮影を担うものが、フィルムカメラからデジタルカメラに変わり、そして現在はスマートフォン端末へと変化した。これにより、準備や手間、時間や時刻、場所、費用の制約が大きく軽減されている。さらに従来はなかったコミュニティーへの容易な発信で共感を得ることができるなど、従来は多くの人が味わうことができなかった新たなメリットも生まれている。

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