ワクチン定温輸送に最適、一体成形の真空断熱筐体とIoTを融合した保冷ボックス:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
パナソニック アプライアンス社は2021年3月2日、IoTセンサーを通じて箱内の様子をモニタリング可能な一体成形保冷ボックス「VIXELL」のレンタルサービスを同年4月1日から開始すると発表。COVID-19のワクチンなど、医薬品の定温輸送向けサービスとして展開する予定。
パナソニック アプライアンス社は2021年3月2日、IoT(モノのインターネット)センサーを通じて箱内の様子をモニタリング可能な一体成形の保冷ボックス「VIXELL(ビクセル)」のレンタルサービスを、同年4月1日から開始すると発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンなど、医薬品の定温輸送向けのサービスとして展開する予定。医薬品卸売を手掛けるスズケングループと共同で実施する。
冷気漏れを防ぐ一体成形の断熱材
抗がん剤などのスペシャリティ医薬品の他、COVID-19のワクチンをはじめ、医薬品の輸送過程では厳重な品質管理が求められる。品質を一定に保つ上では定温配送や、流通経路が適切かを確認するためのトレーサビリティー確保が必須だ。
この2点を同時に実現する保冷ボックスとして開発されたのがVIXELLである。小容量の「Type-S」と大容量の「Type-L」の2タイプがあり、保冷材としてドライアイスを用いる。
VIXELLには大きく分けて3つの特徴がある。1つ目は底と側面がつながった、一体成形の真空断熱筐体(VIC)を用いることで、冷気漏れの可能性を大きく抑えた点だ。
従来、医薬品向けの保冷ボックスにはアルミラミネートフィルムを表面に張った真空断熱パネル(VIP)を使用していたが、パネル同士を接合して箱の形にするため、継ぎ目から冷気が漏れやすいという問題があった。一方で、プラスチックシートを使った一体成形のVICであれば冷気漏れを防ぎやすい。真空断熱に適したスペックに仕上げるために、VICには芯材として新開発のウレタン材料を使用している。
2つ目は、利用前検査の手軽さだ。VIXELLの筐体底面に内蔵した無線真空度センサーユニットによって、専用検査台上にVIXELLを載せるだけで断熱性能の検査が済む。専用検査台はワイヤレス給電方式で無線真空度センサーユニットに電力を供給する。センサーが問題なく駆動すれば、断熱材に穴など欠損が無く、断熱性能にも問題ないということになる。判定結果はNFC方式でPCへと送信され、問題の有無を確認できる。検査自体は数秒程度で完了する。
3つ目はIoTセンサーを活用することで、保冷ボックス内部をリアルタイムでモニタリング可能にした点である。保冷ボックスの内部にアルミ層があると、通信用の電波はボックス内部で反射してしまうため、内部のセンサーから外部への情報送信が困難になる。一方で、VIXELLの内壁はアルミレスのため、内部からの通信用電波を透過する。このため、箱内部の温度変化や、箱の現在位置などの情報を遠隔地に送信し、確認できる仕組みが作れた。
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