「変化が日常化した世界」に最適化する、2021年は「コロナ後」への動きが本格化:MONOist 2021年展望(1/2 ページ)
2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響をあらゆる産業が色濃く受けた1年となった。2021年も引き続きさまざまな影響が続く見込みだが、ワクチン開発などが進む中で「コロナ後」を具体的に見定めた体制や仕組みへの移行が本格的に進む見込みだ。
2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響抜きには語ることはできない1年だった。中国から広がった感染の影響は瞬く間に世界中に広がり、世界各地で感染抑制のために移動を制限するロックダウンが実施され、日本でも外出自粛を強く求める緊急事態宣言が発出された。その後各地で断続的に収束、拡大を繰り返しながら、現在はまた大きく拡大が続いている状況である。ワクチン開発などが急ピッチで進められ、実際に有効なワクチンが生まれつつあるが、2021年もCOVID-19の影響は避けられないことは確実だ。
ただ、多くの企業にとっては「緊急対応」が必要だった2020年3〜5月の状況とは異なり、通常業務の中にCOVID-19の状況を組み込みつつ対応できるような準備が整いつつある。そこで、2021年以降に生まれる変化としては、COVID-19を含めた「大きな変化」に柔軟に対応できる「持続的な仕組み」に、企業の体制やシステムをどう変革させるべきかということになる。
供給面と需要面の2つの方向での影響
製造業にとって、COVID-19の影響は大きく分けて2つの方向で現れている。1つが「供給面の問題」だ。ロックダウンなどで人やモノの移動が制限される中で、サプライチェーンが分断され、モノづくりが進められない状況が生まれた。設計面での問題、部品調達の問題、人が送れないことによる製造品質の問題などで、予定通りにモノが作れない状況が続いている。
もう1つが、需要の急変に対応する「需要面での問題」だ。COVID-19により、医療関連機器やマスクなどの需要が急増する一方で、人の移動が制限される中で需要が急減した製品分野が生まれている。COVID-19の状況次第でこれらの需要の急増や急減は大きく左右され、これらの対応に右往左往する状況が生まれている。
COVID-19による影響が出ているプロセス(クリックで拡大)出典:MONOist、EE Times Japan、EDN Japan編集部「第3回 新型コロナウイルス感染症のモノづくりへの影響に関するアンケート調査(2020年9月)」
「変化が日常化した世界」に対応する体制
これらの2つの方向での問題に対し、製造業では現在は、従来の業務プロセスにリモートワークなどを組み合わせながら、何とか対応をしているという状況だ。しかし、COVID-19の終息が見えない中、少なくとも2021年内は、動向に左右される状況が続く見込みだ。さらに、グローバル化が進む中、COVID-19以外の感染症の世界的な拡大や、その他災害や地政学的リスクによる“不確実性”は今後も高いままである。
経済産業省などが毎年発行している「2020年版ものづくり白書」では、今後の日本の製造業に求められるものとして「ダイナミック・ケイパビリティ」を訴えている。「ダイナミック・ケイパビリティ」とは戦略経営論における学術用語で「企業変革力」と訳される。その本質を端的に述べるならば、「環境や状況が激しく変化する中で、企業が、その変化に対応して自己を変革する能力」のことである。
対義語として、「オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)」がある。これは通常業務を効率的に正しく行う能力のことで、日本の企業はこのオーディナリー・ケイパビリティが非常に高いということが特徴とされている。一方で、ダイナミック・ケイパビリティが弱みとして位置付けられており、これを高めていくことが重要だと「2020年版ものづくり白書」では訴えている。
まさにCOVID-19を含む現在の状況に対しても、このダイナミック・ケイパビリティが求められているといえるわけである。変化が日常化する中でも持続性を持ったモノづくりが行える体制を構築していくということが求められている。COVID-19に対する一時的な対応が完了したのが2020年だとすると、2021年はCOVID-19を含む「変化が日常化した世界」に対し、これらに対応した体制作りが本格化する1年だといえるだろう。
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