15cm角のキューブサイズ、シンプルな見た目の小型エッジAIコンピュータ:人工知能ニュース
AI insideは2020年11月4日、エッジAIコンピュータ「AI inside Cube」シリーズから本体サイズを小型化した「AI inside Cube mini」を発売した。従来機と比べて8分の1程度の体積まで小さくして、オフィスなど設置スペースが限られる場所にも導入しやすいサイズ感を実現した。アルミ製のスタイリッシュな見た目も特徴だ。
AI insideは2020年11月4日、エッジAI(人工知能)コンピュータ「AI inside Cube」シリーズから本体サイズを小型化した「AI inside Cube mini」を発売したと発表した。従来機と比べて8分の1程度の体積まで小型化し、オフィスなど設置スペースが限られる場所にも導入しやすいサイズ感を実現している。価格は、本体代金の3万円に加えて、導入するAIソフトウェアの利用料をサブスクリプションで支払う形式になる。
オフィスや工場にも置きやすいサイズ
AI insideは2015年の設立以来、エッジAIコンピューティング用のハードウェアやソフトウェアの開発、販売に取り組む企業だ。AI inside 代表取締役社長 CEOの渡久地択氏は「現状ではAI開発を行うには多くの時間とコストが要求される。当社は、誰でも安く、早く、簡単にAIを作って使える世の中を実現したいと考えていて、そのための製品開発に取り組んでいる」と語る。具体的な製品ラインアップとしては、エッジAIコンピュータのAI inside Cubeシリーズの他、多様なAIを簡単に開発できるソフトウェア「AI inside Learning Center」、OCR(光学的文字認識)などのAIを管理/活用するツール「DX Suite」の2種類を展開している。
今回発売するAI inside Cube miniは筐体サイズを従来よりも小型化することで、オフィスをはじめ工場など限られたスペースにしか設置できない空間への導入を容易にする効果を狙っている。AI inside Cubeは約30cm四方の筐体だったが、AI inside Cube miniは約15cm四方となっており、体積比では8分の1程度に抑えている。設置後は、AI inside Learning CenterやDX Suiteで開発/管理しているAIモデルを導入した上で、ディスプレイやキーボード、マウスを接続して電源を入れればすぐに使用できる。実際の導入事例としては、「コンピュータのマザーボード製造工場や食品工場で不良品検知などに用いられたことがある」(渡久地氏)という。
AI inside Cube miniは電源電圧100〜240Vに対応しており、消費電力は65Wとなっている。重量は2.5kg。OSにはLinux Ubuntu 18.04.4 LTS(64bit)を採用しており、ストレージサイズは512GB。インタフェースは電源ポートの他に、USB Type-CポートとLANポートがあり、SSDなどを外付けするケースも備えている。
ハードウェアの仕様のうち搭載プロセッサ、GPU、DRAM容量などについては「販売形式の仕様上、クライアント側でソフトウェアをインストール、セットアップする必要がない。AI inside Cubeシリーズの製品コンセプトを考慮した結果、非開示とする」(広報担当者)という。
小型化のため、GPUの冷却機構に工夫も
AI inside Cubeシリーズの外観は、ボルトなどの突起物を一切排したシンプルなデザインとなっている。こうしたデザインを実現する上で工夫した点として、渡久地氏は「一番問題だったのは排熱機構の位置だ。GPUなどを全て小さな箱内に収めるため、冷却用の大きなファンなどを配置する余裕がない。そのため筐体下部の給気機構から吸い上げた外気を、筐体の上側の隙間に設けた排気機構へと送ることで、煙突効果によってGPUの冷却を行うようにした」と振り返った。
AI inside Cube miniのパフォーマンスについて、渡久地氏は、詳細なデータは非公表としたが、「過去に、ごみ処理場のコンベヤーで流れてくる危険物判定に用いる画像認識AIで、従来機とAI inside Cube miniの性能比較を行った。従来機では危険物の判別に0.2秒を要したが、AI inside Cube miniは0.5秒だった。おおよそだが、従来機の40%程度の能力を発揮できると考えてもらいたい。非常に高速な処理が要求される場合を除き、工場での不良品検知などにも使えるレベルだと考えている」と語った。
その上で、AI inside Cube miniで使用しているGPUなどの仕様情報は非公開にしているが、AIの認識精度や処理速度などの能力を決めるのは「ハードウェアそのものであるよりも、ソフトウェアの影響が大きいと考えている」(渡久地氏)とも指摘した。
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