スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩:いまさら聞けないスマートファクトリー(1)(2/4 ページ)
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。
スマートファクトリーの目的は何か
グーチョキパーツは、社員300人規模の部品メーカーです。その中で矢面氏は生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長として、生産部門や設計部門、製品企画部門や経営企画室などさまざまな部署とやりとりをしながら、業務を進めています。新たに取り組むIoTビジネスについては、すぐには大きな成果は出ないまでもさまざまなコミュニティーに参加したり、社内コンテストを開催したりすることで、新たなビジネス構築の機運が徐々に盛り上がりを見せてきていました。
取り組んできたことが徐々に良い雰囲気になってきているぞ。
しかし、そんなある日のことです。生産技術部門は担当役員が交代し、新たに専務が就任しました。その専務から厳しい意見を言われます。
「矢面君、スマートファクトリー化を熱心に進めている割にはあまり成果が出ていないじゃないか」(専務)
矢面氏は「見える化」の成果などを精いっぱい説明しましたが、専務は「そんな小さな成果では、経営的な意味はないんだよ。もっと大きな成果はないのか」と言います。矢面氏はすっかり困ってしまいました。
そんなこと言われたって、いきなり大きな成果は無理ですよ。
そこで、久しぶりに印出氏を訪ね、教えを請うことにしました。印出氏は第4次産業革命の研究者で、以前右も左も分からなかった矢面氏にさまざまな示唆を与え、具体的な活動に踏み出すきっかけをくれた人です。
印出さん、お久しぶりです。
あら、矢面さん、久しぶりね。しばらく来なかったので、グーチョキパーツでの取り組みがうまくいっているんだと思っていたわ。
そうなんですよ。とてもうまくいってたと思っていたんですが、新しく担当になった専務が「スマートファクトリーは経営的な意味が小さい」とか言い出して、困っているんです。
あらまあ、大変ね。スマートファクトリーへの取り組みは、以前聞いた話だとグーチョキパーツでは、とてもうまくやっていたように感じていたけれど、難しいものね。
いやあ。私が担当している中でもスマートファクトリーへの取り組みは「見える化」などでうまくいっている方だと思っていたので、予想外だったんです。どうしたらいいですか。そもそも専務のいうような大きな成果がいきなり出せるものなのでしょうか。
矢面さんの話と専務の話は、それぞれ間違いではないわ。矢面さんの考える「スマートファクトリー」と、専務の考える「スマートファクトリー」が異なっているということがそもそものボタンの掛け違いを生んでいるの。
ど、どういうことですか?
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