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コロナ禍克服の“先”を目指すニューヨークのスマートシティー海外医療技術トレンド(63)(2/4 ページ)

連載第52回で、欧州の保健医療機関による気候変動/環境への取り組みを取り上げた。今回は、スマートシティーと健康/環境の観点から、米国ニューヨークの取り組み事例を紹介する。

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SDGsに準拠したスマートシティー戦略と健康/ウェルビーイング

 ニューヨーク市のスマートシティー戦略の特徴は、本連載第32回第47回で取り上げた「持続可能な開発目標(SDGs)」に準拠している点だ。ニューヨーク市は、2018年、世界の都市の中で初めて、SDGs自発的ローカルレビュー(VLR)を公開したところとして知られている(関連情報)。

 例えば、図2は、OneNYC 2050の目標の1つである「健康的な生活」とSDGsの関係を示したものである。

図2
図2 One NYC 2050の目標「健康的な生活」とSDGsの目標の関係 出典:The City of New York「OneNYC 2050: Building A Strong and Fair City」(2019年4月22日)

 ニューヨーク市の場合、健康/ウェルビーイング分野のスマートシティー戦略に基づくイニシアチブとして以下の4つを掲げている。

  • イニシアチブ13.全てのニューヨーカーのために高品質で、余裕のある、アクセス可能な医療を保証する(例:オンライン診療による医療アクセスの改善)
  • イニシアチブ14.全てのコミュニティーのために、健康および心的健康のニーズに取り組むことによって、公平性を前進させる(例:メンタルヘルス支援サービスの拡充)
  • イニシアチブ15.全ての近隣において、健康的な生活をより簡単なものにする(例:健康によい食事や運動・エクササイズの推進)
  • イニシアチブ16.健康およびウェルビーイングの状態を構築するために、物理的環境を設計する(例:自然に接する環境としての公園の整備)

 本連載第52回で、環境品質を健康/ウェルビーイングの中核に据えた欧州連合(EU)のSDGs戦略を取り上げたが、ニューヨーク市の場合、上記の4つのイニシアチブを、以下のようなSDGs目標と関連付けられるように戦略を設計している。

  • SDGs目標2:飢餓をゼロに
  • SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を
  • SDGs目標5:ジェンダー平等を実現しよう
  • SDGs目標10:人や国の不平等をなくそう
  • SDGs目標14:海の豊かさを守ろう
  • SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

 このように、治療から予防医療に至るまで幅広くカバーする包括的なスマートシティー戦略の下で、実践的なイニシアチブを展開できるのが、ニューヨークの強みとなっている。

 図3は、「イニシアチブ16.健康およびウェルビーイングの状態を構築するために、物理的環境を設計する」で取り上げられたブルックリン地区ジャマイカ・ベイ公園改善プロジェクトの事例である。州立公園と市立公園を連携させながら、新設の湾沿い自然歩道と既存の自然歩道を組み合わせて、環境的側面(SDGs目標14、15)から、ニューヨーク市民の健康・ウェルビーイングの改善(SDGs目標3)を図ろうとしている。市民の間では、スマートフォンや健康ウェアラブル機器が普及しているので、例えば、運動や移動に関連するデータを利用したサービス開発の場としての公園活用などが想定される。その場合、州、市などの枠を超えた広域的な公園施設管理や消費者保護(例:個人情報保護)に関わる規制の見直しなど、マネジメント面のイノベーションも欠かせない。

図3
図3 ブルックリン地区ジャマイカ・ベイ公園改善プロジェクト事例(クリックで拡大) 出典:The City of New York「OneNYC 2050: Building A Strong and Fair City」(2019年4月22日)

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