東南アジアで市場低迷が長引くも、日系乗用車メーカーの生産は回復の兆し:自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により低迷していた自動車生産が、回復の兆しを見せている。日系乗用車メーカー8社の2020年7月のグローバル生産実績は、6社が6月より減少幅を改善した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により低迷していた自動車生産が、回復の兆しを見せている。
日系乗用車メーカー8社の2020年7月のグローバル生産実績は、6社が6月より減少幅を改善した。COVID-19の感染が世界的に広がった2020年3月以降では、SUBARU(スバル)が日系メーカーとして初めて前年実績を上回った。北米や中国などで新車市場の回復が鮮明となる一方で、東南アジアでは市場低迷が長引いており、メーカー各社が得意とする地域の違いが台数にも表れた。ただ、低調なアジアでも新車市場自体は着実に回復しており、今後はメーカー間の温度差も解消されていくことが予想される。
8社のうち、海外生産がプラスとなったのはホンダとスバルの2社。トヨタ自動車と日産自動車も1桁%の減少となるなど着実に改善しており、市場回復が進む北米や中国の影響が表れた。一方で減少幅が拡大しているのがダイハツ工業と三菱自動車だ。その結果、三菱自のグローバル生産台数はスバルを下回り、8社中最下位となった。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 253,857 | 437,234 | 149,525 | 155,001 | 691,091 |
▲ 22.0 | ▲ 1.7 | 18.5 | 31.3 | ▲ 10.2 | |
ホンダ | 58,011 | 365,415 | 145,135 | 178,925 | 423,426 |
▲ 27.0 | 4.3 | 6.8 | 29.4 | ▲ 1.4 | |
日産 | 31,173 | 281,723 | 96,841 | 129,048 | 312,896 |
▲ 58.9 | ▲ 9.1 | 4.7 | 9.4 | ▲ 18.9 | |
スズキ | 96,602 | 133,307 | - | - | 229,909 |
25.5 | ▲ 25.8 | - | - | ▲ 10.4 | |
ダイハツ | 85,928 | 28,963 | - | - | 114,891 |
▲ 0.1 | ▲ 58.8 | - | - | ▲ 26.5 | |
マツダ | 69,101 | 32,419 | 10,940 | 18,150 | 101,520 |
▲ 22.3 | ▲ 13.1 | 36.2 | 4.4 | ▲ 19.6 | |
スバル | 61,439 | 24,164 | 24,164 | - | 85,603 |
▲ 1.6 | 4.3 | 4.3 | - | 0.0 | |
三菱自 | 17,946 | 30,046 | - | 7,028 | 47,992 |
▲ 69.1 | ▲ 56.0 | - | ▲ 30.8 | ▲ 62.0 | |
合計 | 674,057 | 1,333,271 | 426,605 | 488,152 | 2,007,328 |
※上段は台数、下段は前年比。単位:台、% ※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計 |
ダイハツと三菱自に共通するのが東南アジアへの依存度の高さだ。東南アジアでは、COVID-19の感染拡大による経済悪化からの回復が遅れており、足元の市況を見ても7月の新車販売はインドネシアが72%減、タイが27%減と、依然として厳しい状況が続いている。東南アジアを得意とするトヨタの生産実績を見ても、北米や中国の回復が鮮明な一方で、タイやインドネシアなどは軒並み大幅減となっている。
日本国内の生産も着実に回復が進んではいるものの、主要国の中では回復のペースが遅い。国内の新車市場では現在、COVID-19の感染拡大の影響に加えて、2019年10月からの消費税増税により前年に発生した駆け込み需要の反動減が続いている。このため国内市場が本格回復するのは10月以降までかかるとみられている。
トヨタは北米が5カ月ぶりプラス
メーカー別に見ると、トヨタの2020年7月のグローバル生産台数は、前年同月比10.2%減の69万1091台と7カ月連続の前年割れだったが、減少幅は6月より13.8ポイント改善した。国内生産は同22.0%減の25万3857台で10カ月連続のマイナス。国内販売や輸出が着実に回復しており、減少幅は6月比で22.8ポイント改善した。
海外生産は同1.7%減の43万7234台と7カ月連続のマイナスで、6月から9.9ポイント改善した。前年同月比の減少率が1桁となったのは1月以来6カ月ぶりとなる。地域別では、北米が同18.5%増と5カ月ぶりにプラスへ転じた。米国市場の回復が続いており、ライトトラックに加えて「カムリ」や「ハイランダー」などのハイブリッド車(HV)の販売も伸びた。欧州も回復基調が続いているものの、フランスで「ヤリス」を新型に切り替えたことによる大幅減が発生し、欧州トータルでは同24.9%減と減少幅が拡大した。
アジアは、市場回復が進む中国が「RAV4」やカムリの好調で同31.3%増と4カ月連続のプラス。ただ、東南アジアは依然としてCOVID-19感染の影響により低迷しており、インドネシアは同65.1%減。タイも新型車「カローラクロス」を投入したものの、同42.7%減と大幅減が続いている。インドも同64.6%減と低迷し、アジアトータルでは同3.2%減だった。
ホンダも回復傾向、日産は中国と米国が回復
ホンダも回復傾向が鮮明となっている。7月のグローバル生産台数は同1.4%減の42万3426台と12カ月連続の減少となったものの、前年比がプラスとなったスバルを除くと、唯一の1桁減だった。マイナス幅も6月から10.3ポイント改善するなど、着実に回復している様子が伺える。回復の原動力となったのが海外生産で、同4.3%増の36万5415台と2019年9月以来10カ月ぶりにプラスへ転じるとともに、7月として過去最高を記録した。
地域別では、国別で最多となる中国が好調で同29.4%増と2カ月連続で増加し、7月の過去最高を更新。その結果、回復が遅れている東南アジアやインドなどをカバーし、アジアトータルでも同4.4%増と7カ月ぶりにプラスへ転じた。北米も同6.8%増と10カ月ぶりのプラスとなった。ただ、国内は同27.0%減の5万8011台と11カ月連続のマイナス。減少幅も6月から9.5ポイント悪化した。国内販売は回復傾向が続いているものの、欧州向け輸出が3カ月ぶりに減少したことが要因となった。
日産の7月のグローバル生産は、同18.9%減の31万2896台と10カ月連続で減少したものの、減少幅は6月より12.4ポイント改善した。海外の回復が顕著で、同9.1%減の28万1723台と6月比で16.2ポイント改善。地域別では台数ボリュームが最も大きい中国が同9.4%増と3カ月連続で増加するとともに7月として過去最高を更新した。北米も好調で同4.7%増とプラスへ転じた。このうち米国は同0.5%減と前年並みまで回復。メキシコは同12.1%増と大幅増となった。英国も同1.6%増と増加に転じた。工場閉鎖を発表したスペインは0台だった。
国内生産は、国内販売や輸出の低迷により同58.9%減の3万1173台と依然として大幅なマイナスが続いており、18カ月連続の減少だった。ただ、減少幅は6月より24.2ポイントと大きく改善している。
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