2つの“解放”で限界突破、NECや大林組など6社が共創型R&D事業会社を設立:研究開発の最前線(1/2 ページ)
NEC、大林組、日本産業パートナーズ、ジャパンインベストメントアドバイザー、伊藤忠テクノソリューションズ、東京大学協創プラットフォーム開発の6社は、事業会社、金融会社、アカデミアの連携による共創型R&Dから新事業を創出する新会社「BIRD INITIATIVE株式会社」を設立すると発表した。
NECは2020年9月10日、オンラインで会見を開き、大林組、日本産業パートナーズ、ジャパンインベストメントアドバイザー、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、東京大学協創プラットフォーム開発と共同で運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合の下で、事業会社、金融会社、アカデミアの連携による共創型R&Dから新事業を創出する新会社「BIRD INITIATIVE株式会社(バード イニシアティブ、以下BIRD)」を設立すると発表した。BIRDは2025年までに、カーブアウト(事業切り出し)による新事業を6件創出することを目標としている。
新会社となるBIRDの代表取締役社長兼CEOには、NECのコーポ―レート・エグゼクティブで、北米dotDataのカーブアウトやオープンイノベーションによるAI(人工知能)創薬などを手掛けた北瀬聖光氏が就任する。BIRDの技術面でのけん引役となる執行役員 CDOはNEC 研究・開発ユニット 上席主席研究員の森永聡氏が務め、2トップで事業を推進していくことになる。6社の投資事業有限責任組合による資本金は、資本準備金を含めて6億4000万円に上る。
研究開発能力を解き放つ日本発のオープンイノベーションの場に
会見に登壇したNEC 取締役執行役員常務兼CTOの西原基夫氏は「革新的なイノベーションを作り出すには大変な努力と労力が必要だ。ともすれば限界を感じて諦めてしまうが、BIRDは『限界を突破する』ことでイノベーションの創出を目指す」と語る。
近年のデジタル技術によるイノベーション創出企業の代表例として取り沙汰されることが多いのが米国のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)や中国のBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)だ。一方、日本では、GAFAやBATHのような破壊的なイノベーションを起こせていないのが現状だ。西原氏は「日本には意欲的な研究者、開発者が多く存在するが、そのほとんどが国の研究機関や大学、企業といった大規模組織に所属している。NECは、産業総合技術研究所との間で冠研究所を設立するなどしてオープンイノベーションの取り組みを進めて多くの成果を得てきた。その中で気付いたのが、日本におけるイノベーションの躍進のカギとなる2つの“解放”だ」と説明する。
1つは「潜在能力の解放」で、イノベーションの原動力となる優秀な研究者や開発者を集め、力を発揮させていくことが重要になる。もう1つは「枠組みからの解放」だ。「イノベーションには課題が必要だが、大学や企業などの組織に縛られていては、課題を広く共有することができない。そういった枠組みから優秀な研究者や開発者を解放して、よい課題を与えていかなければならない」(西原氏)。
そして、これら2つの解放を実現するためには3つの機能を持った組織を作り上げる必要があるという。3つの機能とは、多様な人材が集まり個々の強みを生かせる「多様性」、特定の個人や組織に偏らない課題が集まる仕組みとなる「中立性」、そして持続的なR&D活動を可能にする「事業性」である。西原氏は「今回新たに設立したBIRDは、2つの解放を実現する3つの機能によって、研究開発能力を解き放つ日本発のオープンイノベーションの場となるだろう」と述べる。
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