絶対に押さえておきたい、3Dプリンタ活用に欠かせない3Dデータ作成のポイント:デジファブ技術を設計業務でどう生かす?(4)(2/3 ページ)
3Dプリンタや3Dスキャナ、3D CADやCGツールなど、より手軽に安価に利用できるようになってきたデジタルファブリケーション技術に着目し、本格的な設計業務の中で、これらをどのように活用すべきかを提示する連載。第4回は、3Dプリンタを活用する上で欠かせない「3Dデータ」に着目し、3Dデータ作成の注意点や知っておきたい基礎知識について解説する。
3Dデータを作成する際のポイント
ここまで、3D CADで作成した3DデータをSTLファイルに出力する際の注意点を説明しました。以降では、3Dプリンタで造形したい形状を設計するときに、気を付けなければならないポイントについて解説します。
ポイント1:肉厚
まずは、形状の肉厚です。モノを設計する上で、肉厚を何mmにするかは重要なポイントですが、3Dプリンタでの造形だけを考えた場合、“肉厚の薄さ”が問題を引き起こす可能性があります。3Dプリントするためのデータは、中身の詰まったソリッドデータである必要があり、厚みがゼロ(0mm)のものは3Dプリントできません。また、厚みが薄過ぎると造形されなかったり、もしくはすぐに折れてしまったりなど強度的な課題が残ります。
では、どれくらいの肉厚なら問題ないのでしょうか。実は、使用する3Dプリンタの機種などによって異なります。中でも造形方式(前回参照)による違いが大きく、液槽光重合(光造形)、材料噴射(インクジェット式)など、光で樹脂を硬化させる方式のものは比較的薄い肉厚でも造形可能です。筆者の経験では、1mm程度の肉厚であれば再現可能で、場合によってはそれ以下でも造形することができました。ただ、サポート材を除去する際に誤って折ってしまうなど、強度の問題は残ります。これは強度のある材料に変更することで解決できることもありますが、3Dプリンタの積層ピッチが数十μm単位だとしても、形状の再現や強度を考慮すると、やはり1mm以上の肉厚は必要だと思います。
一方、材料押出(熱溶解積層法:FDM)の場合、材料が出てくるノズルの直径が一般的に0.4mmとなっていますが、最低2〜3層は必要であり、強度も考慮すると厚みとして2mmくらいはほしいところです。もちろん、3Dプリンタの機種や材料によって変わってきますので、一概には言えません。実際に使用する3Dプリンタが決まっている場合には、テストプリントを行う、あるいは造形依頼をする場合には依頼先に厚さについて確認しておく方がよいでしょう。
ポイント2:積層方向
また、肉厚と関連してくる強度については、積層方向も影響してきます。例えば、材料押出方式の3Dプリンタのように下から上へ積層した造形物は、横からの力に弱い傾向があり、はがれるように壊れる場合があります。こうした事象は材料押出方式の3Dプリンタに多く見られ、積層方向によって表面の仕上がりも変わってきます。このように、造形エリアに対して3Dデータをどのように配置するかも重要なポイントといえます。
ポイント3:サポート材
次に、サポート材です。前回説明した通り、3Dプリンタで材料を積層していく際、下に何もない状態(中空形状)だと、積層しようとした材料は空中にとどまることができず、下に落ちてしまいます。それを防ぐのが、中空形状を支えるサポート材です。
3Dプリントするパーツの3Dデータを作成する際、サポート材がどのように配置されて、どのようにしてサポート材を除去するかまで考慮する必要があります。場合によっては、金型の抜き勾配のように角度を付けてサポート材が付かないようにする方法をとることもあります。
サポート材は、造形後に除去する必要がありますが、例えば、パイプが複雑に曲がっているような形状の場合、パイプの中にサポートが付いてしまうため、奥の方のサポート材が除去できないことがあります。その他にも、深い穴の奥に詰まったサポート材など、造形はうまくできてもサポート材をきれいに除去できないといったケースが見られます。また、サポート材を除去する際、力を入れ過ぎて造形物を誤って破損してしまうこともよくあります。
サポート材はモデルと同じ材料が使用される場合と、別の材料になっていて水や熱で溶かして簡単に除去できるタイプのものがあります。3Dプリンタの機種を選定したり、造形を外部に依頼したりする場合は、サポート材の除去方法についても確認しておいた方がよいでしょう。
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