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流体と構造の連成解析初心者のための流体解析入門(15)(2/3 ページ)

流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は、流体と固体の相互作用をテーマに、流体、構造の「連成解析」について取り上げる。

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強連成と弱連成

 連成解析には「強連成」と「弱連成」があります。

 強連成は、構造と流体(あるいはそれら以外の現象も含めて)といった異なる現象の支配方程式を、1つの統合された支配方程式にまとめた上で解くというものです。強連成の場合、より精度の高い解析結果を得られる可能性が高い一方で、解くべきマトリックスは、個別の現象のマトリックスよりもはるかに大きなものになるため、通常の解析以上に強力な計算リソースが求められます。また、そもそも論として、強連成が可能なソフトを持っている必要もあります。

 一方、弱連成では、個別の現象はそれぞれのソルバーで解かれます。つまり、構造解析は構造解析用のソルバーで、流体解析は流体解析用のソルバーで解くことになります。例えば、変化する流れの中における構造物の現象を計算する場合、まず、あるタイムステップ分の流れの計算を流体解析ソフトで行い、着目する構造物にかかる圧力を求めます。次に、流体解析で求められた圧力をファイルやAPIなどを介し、構造解析ソフトに対する入力情報として渡してやります。そして、その情報を受け取った構造解析ソフトは、その圧力を境界条件(荷重条件)として定義し、指定したタイムステップ分だけ計算を行います。すると、構造解析ソフトは変位や応力などの結果を通常通りに出力します。情報の流れが“流体⇒構造”などの片方向であれば、計算はこれで終わりです。

 しかし、流れ場の中で構造物が大きく変形し、その結果として流れも影響を受けるような場合には、流体解析を再度行う必要があります。このようなケースでは“情報の流れが双方向になる”必要があります。そうすると、今度は構造解析の結果としての変位の情報を、流体解析ソフトへと逆方向の流れで渡してやります。流体解析ソフトは、渡された変位情報を基に対象となる構造物を変形した形状に置き換えた上で、次のタイムステップ分だけ新しい形状に対して流れの計算を行い、新たな流れや圧力などの結果を得ます。そして、再度その情報を構造解析ソフトに渡して、新しい荷重条件の下で構造解析を行う……ということをひたすたら繰り返します。

弱連成解析のメリットは?

 弱連成解析の場合、まとめて支配方程式を解いているわけではないため、厳密さという意味で、強連成解析に劣ることは否めません。しかし、一方でメリットも当然ながらあります。

 弱連成解析のメリットは、ファイル出力や2つの領域の解析をつなぐ“ブリッジ”のようなソフトなど、何らかの形で圧力や変位といった情報を渡す手段があれば、既存の解析ソフトのみで連成解析を行うことが可能な点です。また、計算を行うのは一度に1つの領域のソフトになるため、計算リソースは強連成ほど求められません。

 一方、弱連成解析のデメリットですが、先ほども述べた通り、強連成と比較すると解析精度が落ちる点が挙げられます。さらに、1つの領域のソフトが計算している間、もう片方のソフトはアイドル状態になってしまいます。そうした傾向は、お互いの領域の計算条件がきつく、それぞれに計算時間がかかるとより高まります。例えば、構造解析側で極端な変形に複雑な接触条件などでリサイクルがたくさんかかり、1インクリメント進むのに20分かかるといったケースが発生すると、その間に流体解析側のソフトがタイムアウトになってしまう……といったことが起こり得ます。

 とはいえ、弱連成解析であってもきちんと設定し、2つの領域の計算を効率良く結び付けることで、より現実に近いシミュレーションが行えるようになります。2つの領域の解析をつなぐための手段、環境があるのならぜひチャレンジしてみてください。

 それでは次ページで、流体、構造の連成解析を実践してみましょう。

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