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操縦者の感性を定量評価、クレーン開発でのタダノのシミュレーション活用3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2020 ONLINE(1/2 ページ)

ダッソー・システムズは、オンラインイベント「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2020 ONLINE」(2020年7月14日〜8月7日)を開催。その中でカテゴリーセッションとしてタダノ 技術研究所 機械創造ユニットの市川浩樹氏が登壇し「新時代に向けた価値創造への挑戦〜感性評価ができるクレーンリアルタイムシミュレーター〜」をテーマに、同社が取り組んだリアルタイムシミュレーターへの取り組みを紹介した。

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 ダッソー・システムズは、オンラインイベント「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2020 ONLINE」(2020年7月14日〜8月7日)を開催。その中でカテゴリーセッションとしてタダノ 技術研究所 機械創造ユニットの市川浩樹氏が登壇し「新時代に向けた価値創造への挑戦〜感性評価ができるクレーンリアルタイムシミュレーター〜」をテーマに、同社が取り組んだリアルタイムシミュレーターへの取り組みを紹介した。

建設用クレーンを世界で展開

 タダノは1919年に創業。日本初の油圧クレーンの開発などに取り組み、現在は建設用クレーン、車両搭載型クレーンなどLE(Lifting Equipment、移動機能付抗重力・空間作業機械)分野で世界ナンバーワンシェアを目指している。売上高は2279億円(2020年3月期連結)、海外売上比率54.1%だが、今後は国内の売上高を維持しながら、海外比率を8割にまで高めることを目標におく。

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オンライン講演を行うタダノの市川氏

 研究部門では「将来の安全で生産性の高い革新的な建設ソリューション」をテーマに掲げている。また、開発部門では今必要とされる製品の開発を進め、構造体技術、動作制御技術、走行体技術などのコアテクノロジーの進化を目指している。タダノでは、3D構造解析システムや3D CADを積極的に活用し製品開発のスピードを速めており、「スマートチャート」「オプティ・ウィドゥス」「タダノビューシステム」など、世界に先駆けた技術を世に送り出してきた。

 同社の建設用クレーンは高速走行が可能で、最大吊り上げ荷重100トン以上のオールテレーンクレーン、最大吊り上げ荷重3200トンまでラインアップを備えたクローラクレーン、コンパクト性・小回り性に優れたラフテレーンクレーンなどがあり、クローラクレーン除いた同社の製品シェアは国内ではトップの53%、世界台数シェアも約3割を誇る。これらのクレーンのうち、現在の同社の主力はラフテレーンクレーンで、今回の講演で紹介したシミュレーターは、ラフテレーンクレーンを想定したものだという。

独自の感性評価を加えたリアルタイムシミュレーターを開発

 建設用クレーンは「走行」と「クレーン作業」という大きく2つの機能を持つ。そのため、車体は自動車と比較しても部品点数が多く複雑な構造になっており、試作機の製作にも時間がかかり、開発工程の手戻りを小さくすることが重要となっていた。

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クレーン各部の名称(クリックで拡大)出典:タダノ

 クレーンはブームの先からワイヤロープを垂らし、ワイヤロープの先のフックに荷物を吊り下げる。ワイヤロープで単純に荷物を支持しているだけでなく、ブームや他の構造物がつながっており、それらは弾性体的にふるまう。例えば、重い荷物を吊り上げた場合、その荷重によりブームは大きく変形(たわみ)する。ブームがたわむと、それだけブームの先端は移動する。重い荷物をワイヤロープで巻き上げようとすると、荷物が地面から離れた瞬間、荷物は振り子のように振れてしまう。「このように剛体で扱える機械とは異なり、弾性体としての性質がクレーンの操作を難しくしている。特に、数トンの荷振れは危険であり、安全な作業には荷振れを抑え、操作のしやすい機械が必要で、その開発にはオペレーター(操作者)の感性評価が行える環境が必須だった」と市川氏は訴える。

 しかし、一般に操作の感性評価を設計段階で行うことは非常に困難である。「3Dの図面やクレーンを模擬したシミュレーション結果のグラフをみても操作感性は分からなかった」(市川氏)。そのため、同社は試作機製作前の感性評価を可能にするために、リアルタイムで動作するクレーンシミュレーターを開発した。

 同シミュレーターは、さまざまな条件を数値モデル化し、ブームのたわみなどの実際の物理的な影響を精緻に反映している他、実機と同じ操作レバーやCG映像などを加えることで、実際のキャビンから見る風景に近い現実感を作り上げたことが特徴だ。同シミュレーターのシミュレーションシステムは、クレーンの制御用コントローラーと静的油圧モデル、機構解析モデルが連携しており、制御系、油圧系、機構系の連成解析が行われる。そして各構造物の位置情報は描画システムに送られCGを作成するという仕組みだ。

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リアルタイムシミュレーターのシステム構成(クリックで拡大)出典:タダノ

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