線形静解析の流れを“ステップ・バイ・ステップ”で理解する:構造解析、はじめの一歩(5)(3/5 ページ)
「構造解析」を“設計をより良いものとするための道具”として捉え、実践活用に向けた第一歩を踏み出そう。第5回は「誰もが必ずできる線形静解析」をテーマに、無償ツールを活用しながら“ステップ・バイ・ステップ”で大まかな線形静解析の流れを解説していく。
メッシュ分割する
いよいよ「メッシュ分割」です。メッシュ分割とは、有限要素データである節点や要素を生成することです。Fusion 360などでは、設計モジュールから解析モジュールに移るだけで、メッシュが自動で分割されます。あっけないくらい簡単です。メッシュ分割で最重要なのがメッシュサイズです。Fusion 360では、モデルのサイズから最適と思われるメッシュサイズが自動設定されます。
最適なメッシュサイズについては、さまざまな調査、研究、議論があります。一般的には有限要素は細かければ細かいほど解析精度はアップします。もちろんその分、計算リソースを使うことになり、解析の待ち時間は増えることになります。
確かにメッシュサイズが小さければ小さいほど解析精度はアップしますが、有限要素法による解析には「特異点」という問題が付きまといます。特異点とは、ピン角などで応力が特異になる現象で、応力が異常値を示すことです。この応力は無視しなくてはなりません。解析結果に特異点が存在すると、メッシュを細かくすればするほど特異点の応力はどんどん上昇します。理論的には無限大にまで上昇します。
ユーザーが特異点の応力特性を知らずして、「メッシュを細かくすればするほど解析精度が上がる」という慣例に従うと次のようなことになります。
担当者:解析が終わりました! 最大ミーゼス応力は「100MPa」です。
上長:おぉ、そうかぁ! 講習会で「メッシュサイズが小さければ小さいほど解析の精度が上がる」と言っていたなぁ。よし、もう少しメッシュサイズを小さくしてやってみてくれ。
担当者:メッシュサイズを小さくして解析してみました。最大ミーゼス応力は「250MPa」です。
上長:メッシュサイズを小さくしたから、精度が上がったんだな。もう少しメッシュサイズを小さくしてやってみようか。
担当者:メッシュサイズをさらに小さくして解析してみました。最大ミーゼス応力は「870MPa」です……。
上長:……。
担当者:……。
この話は、筆者が実際に経験したものです。応力特異点のことを知らない解析の初心者でも、ある程度正しい解析結果を得るためには数回の解析を行って最適なメッシュサイズを決定しなければなりません。その詳細な手順については、別の機会で紹介します。
ここでは、メッシュサイズは「5mm」としました。有限要素の中間節点は必ずオンにして、四面体2次要素を生成するようにしてください(図3)。
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