協働ロボットに満を持して参入した三菱電機、カギはシステムとしての使い勝手:協働ロボット(1/2 ページ)
三菱電機は新たに同社初となる協働ロボット「MELFA ASSISTA(メルファアシスタ)」の発売を発表した。協働ロボットとしては後発となる三菱電機だが、その強みや勝算をどう描くのだろうか。大塚氏と三菱電機 名古屋製作所 ロボットテクニカルセンター長の荒井高志氏に話を聞いた。
「協働ロボット市場はまだまだこれからの市場。新しい機能の検証などにしっかり時間をかけた」。こう語るのは三菱電機 名古屋製作所 ロボット製造部長の大塚亨氏である。
三菱電機は2020年5月21日に同社初となる協働ロボット「MELFA ASSISTA(メルファアシスタ)」と、同ロボットの導入や立ち上げを容易にするプログラム作成ツール「RT VisualBox」を発売した。協働ロボットとしては後発となる三菱電機だが、その強みや勝算をどう描いているのだろうか。大塚氏と三菱電機 名古屋製作所 ロボットテクニカルセンター長の荒井高志氏に話を聞いた。
人とロボットが一緒に働く環境を広げる
協働ロボットは、安全停止機能などを備え、安全柵の設置なしに人と同じ空間で作業できるロボットだ。従来の産業用ロボットの活用が難しかった領域でロボット活用を広げられるという期待を集めている。新たに三菱電機が発売した協働ロボット「MELFA ASSISTA」は5kg可搬の6軸のアーム型ロボットだ。国際規格「ISO 10218-1」「ISO/TS 15066」に準拠している他、国際的な第三者認証機関による機能安全規格の認証も取得済みだという。
開発のポイントについて、大塚氏は「人手不足などにより自動化を求めるニーズは高まっているが、現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響などを考えても、人の作業の一部を代替したり、人と共同作業をしながら支援したり、人とロボットが一緒に働く環境の構築が重要になっている。その意味では、安全性はもちろんだが、使いやすさや導入しやすさをどう高めるかを重視した」と語っている。
「MELFA ASSISTA」は、ロボットアーム上に搭載した専用操作ボタンで、ロボットへの直接の教示作業(動作の記録・再生作業)が行え、ティーチングボックスなしに作業指示を行える。また、同時に発売した独自のプログラム作成ツール「RT VisualBox」により、ブロック図を用いることで、簡単にロボットシステムのプログラムを作成できる。ロボットハンドやカメラなどの周辺機器との接続設定も容易で、ロボットのプログラムの開発や設計工数、システムの保守管理工数を削減可能としている。
「ダイレクトティーチングや『RT VisualBox』により、プログラムを書かなくてもロボットに簡単に教示作業が行える点がポイントだ。協働ロボットにより新たな用途開拓を進めようとしてもロボットの活用や導入が行える人材は限られている。これまでロボットにあまり触れてこなかった人でも簡単に活用できるように開発に時間をかけた。特に『RT VisualBox』は強みになると考えている。今後はスマートフォン端末を使い慣れているデジタルネイティブ世代が増えてくる。ビジュアル的にプログラミングできる点が導入を広げるポイントだ」と大塚氏は語る。
また、人と同じ空間で作業を行うためには、ロボットが人の動きや接触を認識するだけでなく、人がロボットの動きや意図を理解する「人とロボットのコミュニケーション」が重要になる。「MELFA ASSISTA」では、ロボットアーム上のLEDライトで、ロボット単体で稼働状態を周辺に示すことができ、安心な協働作業環境を構築できる。
「安全柵がない中でロボットが人に意図を示さずに突然動くと、心理的に恐怖を与えることになる。人と同じ空間で働くということは単純に『当たったら止まる』ということだけでない。人が安心して働くためには、ロボット側の意図も人に知らしめる必要もある。こうした検証にも時間をかけた」と大塚氏は述べている。
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