withコロナ時代のリスクに対応、トレンドマイクロが工場や自動車向け商品強化:IoTセキュリティ
トレンドマイクロは2020年5月27日、2020年度の事業戦略説明会をオンラインで開催。リモート化に伴うリスクへの対応と、IoT関連事業を積極的に推進する方針を明らかにした。
トレンドマイクロは2020年5月27日、2020年度の事業戦略説明会をオンラインで開催した。リモートワークの増加など新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による仕事環境の変化が引き起こす新たなリスクに対応していくこと、また、今後はコネクテッドカーやスマートファクトリーなどのIoT(モノのインターネット)関連事業を積極的に推進することなどを説明した。
COVID-19が工場の省人化を促進、リスク増大の恐れも
会見の冒頭でトレンドマイクロ 取締役副社長の大三川彰彦氏は、国内企業によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みについて「2018年には経済産業省からいわゆる『2025年の崖』レポートが公開され、欧米諸国と比較して国内企業のDXが遅れていることが指摘された。それから数年たった2020年、国内企業は業務の棚卸しを終え、いよいよDXを本格化させようとしている。これに5Gのサービス開始やスマートファクトリー化の流れが合わさり、社会全般で急速な変化が生じることになる」と語った。
また大三川氏はこうした環境変化がCOVID-19の影響によって加速していることも指摘した。「さまざまな企業でリモートワークがデファクト化し、教育関係のオンライン化も進む。工場でも人を介さずしていかに効率性を上げるかが課題となり、各所でICTによるスマート化への取り組み速度が上がっている」(大三上氏)。
一方、社会全体でクラウドを活用したICT化が進むことで脆弱性や設定不備を悪用したサイバー攻撃も脅威を増す。大三上氏は「今後、国内工場でローカル5Gを活用したIoT化がさらに進めば、マルウェアの侵入によって製造物損害や生産ラインが停止するリスクが増加する危険性もある」とも指摘した。
コネクテッドカー、スマートファクトリー事業を積極的に推進
こうした環境変化を背景に、トレンドマイクロは2020年度の新戦略として「リモートマネジメント時代におけるカスタマーサクセスの実現」を打ち出す。そして同戦略を支える事業方針として「DXを推進するクラウドセキュリティの拡張」「SaaSモデルへの移行加速とクロスレイヤーで脅威を検知し対処するTrend Micro XDR(クロスディーアール)の提供」「IoT関連ビジネスの推進強化」の3つを提示した。
これらのうち製造業と関わりの深い「IoT関連ビジネスの推進強化」においては、モビリティのセキュリティ強化を目指すコネクテッドカー事業、ローカル5Gやエッジデバイスのモニタリングサービスなどを提供するスマートファクトリー事業の2領域を主力として展開する。
コネクテッドカー事業ではTCU(テレマティクス制御ユニット)やIVI(車載インフォテインメント)などの車載機器の他、LTEや5Gによる通信ネットワーク、テレマティクスサーバなどのバックエンド向けセキュリティサービスを提供する。
同事業向けでは、IoT機器向けセキュリティソリューション「Trend Micro IoT Security for Automotive」や通信ネットワーク向けの「Trend Micro Virtual Network Function Suite」の他、2020年3月24日から提供開始したクラウドセキュリティソリューション「Trend Micro Cloud One」など多様な製品を販売している。これらの商品が収集したサイバー脅威のログはデータレイク「Trend Micro XDR」に送信される。そしてサイバー脅威の早期発見を目指すサービス群「スレットインテリジェンス」とデータ連携することで、多種多様なインシデントへの迅速な対応が可能となり、セキュリティ被害を最小化できるという。
スマートファクトリー事業では、IT部門でのマルウェア感染防止、OT部門での持ち込みUSBからの感染防止、IoT機器間でのウイルス感染防止の3分野で商品展開を推進する。IoT機器に関連するセキュリティ製品としては、産業向けファイアウォール「EdgeFire」や産業向けIPS(Intrusion Prevention System:不正侵入防止システム)「EdgeIPS」を既に日本国内を含めた世界全域で発売中だ。また大三川氏は「OT領域でのパートナーに対するセキュリティサービス開発を新たに進めており、以前からOT関連のパートナーに提供するセキュリティサービス開発を新たに進めている。また、以前からOTに特化しているパートナーだけでなく、ITからOTへの進出を図ろうとしている新たなパートナーとの関係も構築する」と述べる。
またトレンドマイクロの今後の製品開発方針について大三川氏は「COVID-19により増加したリモートワークがきっかけでさまざまな領域に課題が生じている。新しい環境の困り事に対して、当社はソフトウェア開発と運用を一体化するDevOps(デブオプス)体制で対応し、必要なソリューションを即座にリリースしていく姿勢だ。開発者による積極的なソリューション提供によって、ユーザーに自身の仕事に集中してもらえる環境を作っていく」と語った。
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