協働ロボットのリスクを低減する国際規格「ISO 12100」「ISO TS 15066」とは:協働ロボット
ユニバーサルロボットは2020年5月22日、協働ロボットのリスクアセスメントの進め方を解説するウェビナーを開催。リスクアセスメントの国際規格「ISO 12100」「ISO TS 15066」などを扱った。
ユニバーサルロボットは2020年5月22日、協働ロボット導入を検討中のユーザーなどを対象に、リスクアセスメントの進め方を解説するセミナーをオンラインで開催した。リスクアセスメントの実施時に重要な国際規格「ISO 12100」「ISO TS 15066」などを取り上げ、その概要を説明した。なおここでのリスクとは、作業員と協働ロボットの身体的接触に伴う事故の発生可能性を指している。
協働ロボットのリスクアセスメントと、それに基づいたリスク低減の方法はISO 12100に記載されている。同規格では、リスクアセスメントとリスク低減の手順について以下のように説明する。
まず、協働ロボットの動作範囲や出力を調整して作業員の安全性を確保する(機械的制限の決定)。その後、協働ロボットの試運転で新たな接触リスクを発見し(ハザードの同定)、さらに接触時の被害程度まで予測する(リスク推定)。予測時には接触に伴い生じ得るケガの深刻度だけでなく、接触の発生確率や回避可能性まで考慮に入れて対策必須のリスクを選定(リスク評価)、最最後に機械的制限を通じてリスク改善を図る(リスク低減)。一度に全リスクの排除を目指すのではなく、リスク低減サイクルを回し続けることで徐々に接触リスクを減らすという考え方だ。
またロボットと人間の接触は、その接触の仕方によって「過渡的接触」と「準静的接触」の2種類に分類される。この区分を定義しているのがISO TS 15066である。過渡的接触と準静的接触の区分は、ロボットと人間の接触時間の違いによるものだ。具体的にはロボットと人間の間に0.5秒以下の身体的接触が発生する状況、平たく言えば身体の一部が跳ねのけられるような接触を過渡的接触、0.5秒以上にわたる、いわゆる挟まれ事故に分類されるような接触を準静的接触と定義している。
なお、ISO TS 15066には過渡的接触と準静的接触の発生時に、人間にかかる力がどこまで許容できるかを示す最大許容圧力も記載されている。例えば準静的接触時には首は150N、背中は210N、指は140Nまでの圧力が許容される。一方で、過渡的接触の場合は、準静的接触の許容圧力の2倍が限界値として設定されている。ユニバーサルロボットのテクニカルサポートマネージャーである西部慎一氏は「ISO TS 15066には安全設計方策として、力やトルクの速度制限をかける、ロボットのグリップ部分の接触表面積を増やすといった手法が記載されている。こうした工夫により最大許容圧力の範囲内に収まるように接触リスクを低減できるだろう」と語った。
ただし、どれほど機械的制限を施しても排除しきれないリスクというものも当然ながら存在する。西部氏は「刺し身の加工作業のためにロボットに刃物を搭載することがあったとして、こういう場合はロボット単体では防ぎきれず、ユーザー側で刃物に触れないよう最大限気を付けるしかない。有効な対策としては、センサーでロボットを停止させる、ロボットの作業中に警告ランプで作業員に知らせるなどの方法が考えられる」と指摘した。
また西部氏は、リスク低減サイクルを円滑に回すためのポイントとして「ロボットのグリップ部分にかかる接触面積あたりの圧力など、細かい部分を検討しだすときりがなくなり、リスク低減の施策が進みにくくなる。まずは2Dスキャナーなど一定程度の安全を比較的簡単に確保できるオプション品をロボットに搭載して、それをベースに自社の安全基準を考えていく流れが現実的なアプローチになるだろう」と語った。
関連記事
- いまさら聞けない 機能安全入門
あなたは、人に「機能安全」を正しく説明できるだろうか? 機能安全基本規格「IEC 61508」を基に機能安全の基礎とその概要について解説する - 「プロセス実装」のポイント(その1):機能安全管理プロセス
中小サプライヤを対象に、ISO 26262に取り組む上での実践的な施策について紹介する本連載。第4回は、第3回で基礎を解説した「プロセス実装」のうち、Part2の機能安全管理プロセスについて掘り下げる。Part4〜6のエンジニアリングプロセスについても、ティア1サプライヤの取るべき対策を紹介しよう。 - “プラットフォーム化”を進めるユニバーサルロボット、仲間集めを着々と進行
ユニバーサルロボットは「2019国際ロボット展(iREX2019)」(2019年12月18〜21日、東京ビッグサイト)において、同社が展開する協働ロボットを活用した製造、物流現場でのソリューション提案を推進。新たに日本におけるパートナーとしてSMCとCKDとユニバーサルロボット向けのロボットハンドを披露した。 - 複雑な塗布作業でも簡単にティーチングできる、ユニバーサルロボットがデモ展示
ユニバーサルロボットは「第4回ロボデックス」で、協働ロボット「UR3e」による塗布作業や、AGVに搭載可能な協働ロボット「OEM DC Model UR5e」のデモ展示を披露する。 - 協働ロボット市場は第2フェーズに、URの“次の一手”とは
デンマークのUniversal Robots(ユニバーサルロボット、以下UR)は2019年12月17日、事業戦略の説明を行い、プロダクトおよびテクノロジーベースでの提案から、ソリューションおよびアプリケーションベースでの提案に大きくかじを切る方針を示した。本稿では会見の内容と、UR社長のユルゲン・フォン・ホーレン氏へのインタビューの内容を紹介する。 - ユニバーサルロボットは成長継続に自信「協働ロボットは不確実な時代にこそ必要」
ユニバーサルロボットが、新たに開設した日本オフィス(東京都港区)で記者会見を開催。来日したユニバーサルロボット 社長のユルゲン・フォン・ホーレン氏が同社の事業戦略について説明し、併せて報道陣向けに新オフィスのトレーニング室とアプリケーション室を公開した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.