切削加工のエース! フライス加工とマシニングセンター加工の技術:ママさん設計者が教える「設計者のための部品加工技術の世界」(5)(2/3 ページ)
設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第5回は、「フライス加工」と「マシニングセンター加工」について取り上げる。
マシニングセンター加工の世界
そして、NC化に加えて工具交換までを自動化した機械が「マシニングセンター」です。マシニングセンターもフライス盤と同様に、立型と横型があります。多くは3軸制御の立型ですが、近年は自由曲面を持つ3次元形状の削り出しにも対応できる4軸、5軸の複合軸機の普及もどんどん進んでいます。なお、横型マシニングセンターには、加工物を自動交換する「パレットチェンジャー」が装着できるので、連続稼働による量産部品の加工に最適です。
図5は立型5軸マシニングセンターです。一般的に3軸で加工するNC工作機械やマシニングセンターは、複数の面を加工する場合、加工面の入れ替えを手動で行います。これが“段取り替え”です。段取り替えは、加工物の脱着に時間がかかる上、加工が進行するうちに、チャッキングを補助する治具が必要になることがあります。
こうした手間を軽減し、一度のチャッキングで多面加工できるのが、5軸制御のマシニングセンターです。これは、X、Y、Zの3軸に加え、A、B、Cの回転軸のうち2軸を追加したものです(注1)。
※注1:【A軸】とはX軸を中心として回転する軸のこと、【B軸】とはY軸を中心として回転する軸のこと、【C軸】とはZ軸を中心として回転する軸のことです。
5軸加工には、「割り出し加工」と「同時制御加工」の2種類があります。割り出し加工は、回転軸2軸を使って先に加工に必要な角度を割り出しておいて、それに直交する3軸(X、Y、Z)を動かして切削するやり方です。もう1つの同時制御加工は、回転軸2軸の回転角度とそれに直交する3軸の計5軸を、同時に制御して切削します。同時制御加工は、ひねりのある自由曲面を持つインペラー(図7)などの複雑形状の部品加工で非常に重宝されます。
「今の世の中、工作機械はほとんどNC制御で、プログラムの作成もCAMがやってくれるんだから、ちょっと教わって慣れてしまえば、誰がやっても同じ品質のものが作れるんでしょ!」というイメージは、当たっているようで、ハズレでもあります。
CAMを使ってシミュレーションしたパスの通りに手間なく加工できれば、確かに楽です。しかし、実際は加工前の段取りの中で多くを占めるのが、材料の固定方法や加工条件の工夫といった、自動化できない“人間の思考に頼る部分”です。この作業は加工者の知恵の絞りどころで、この蓄積がCAM作業にも反映されて加工ノウハウとなっていくのです。機械が数値制御化され、コンピュータがプログラム作成を支援してくれても、モノを作るには相変わらず“人間の感性”が必要なのです。
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