3D CADを用いて2D図面を作成すべき理由:“脱2次元”できない現場で効果的に3D CADを活用する方法(9)(2/3 ページ)
“脱2次元”できない現場を対象に、どのようなシーンで3D CADが活用できるのか、3次元設計環境をうまく活用することでどのような現場革新が図れるのか、そのメリットや効果を解説し、3次元の設計環境とうまく付き合っていくためのヒントを提示します。今回は、3D CADに搭載されている基本的な「図面機能」について取り上げます。
3D CADで2D図面を作成するタイミングとメリット
3D CADで2D図面を作成する大きなメリットとして、設計変更に対する“3Dモデルと2D図面との連動性”が挙げられます。
3Dモデルに修正が入り、形状が変更された場合、2D図面も連動してその修正が反映されます。記入していた寸法や作成していた断面図、詳細図など、全て連動して修正されます。「正面図は修正したけど、右側面図を修正し忘れた……」といった製図や2D CADのよくあるミスは起きません。3D CADで2D図面を作成することで、各投影図と寸法(サイズ)に矛盾のない図面を作成できます。
ここまで3D CADにおける2D図面機能について説明してきましたが、特に製図や2D CADの経験がある人は、3D CADで簡単に図面が作れることに驚かれたのではないでしょうか。2D CADから3D CADに移行された方々の中には、「2D図面の作成が楽になる」という理由で利用されている方もいます。
前述したように、一般的な3D CADであれば、3Dモデルと2D図面が連動しているため、3Dモデルが全て完成してから2D図面を作成する必要はなく、3Dモデルを作成している設計の初期段階から2D図面を作成し、図面を更新しながら寸法(サイズ)を確認して作業を進めるといったことが可能です。
設計作業を進めていると、「A」という要件を優先して作成したら、「B」という要件が守れなくなってしまった、ということがよくあります。そうした場合、要件をあらかじめ図面化しておくことで、後から調べやすくなり、間違いなどにも気付きやすくなります。
3D CADの利用において、「2D図面の作成は最後にやらなければいけない」という固定概念を持っている人もいますが、そんなことはありません。早い段階から2D図面を作成することで、全体の形状から細かい寸法のところまでしっかりと確認しながら、着実に設計作業を進めていくことができます。
3D CADの図面機能に合わせた社内ルールの作成
ここまで、3D CADを用いた2D図面作成のメリットを述べてきましたが、その逆、起こり得る問題点についても触れておきます。
図面は、製図規格にのっとり作成します。日本の場合は、JIS(日本工業規格)の製図規格があるわけですが、3D CADで2D図面を作成した場合、一部、製図規格と合わない部分が出てきます。
分かりやすい例だと、JISでは円の形が分かる形状に寸法を入れる際、寸法補助記号の「Φ」を省略することになっていますが、3D CADでは円に直径を付けようとすると、自動で記号が付加されます。もちろん、この記号を消すこともできますが、手間が掛かります。
また、断面図の作成でも組図の場合、ボルトやナット、リブなど、“断面にすると分かりにくいものは断面にしない”というルールがあります。しかし、3D CADの場合は、設定で変更できるものもありますが、断面が作成されてしまいます。それ以外の製図のルールについては、山田学氏の連載「演習系山田式 機械製図のウソ・ホント」を参考にしてください。
前述の通り、3D CADで2D図面を作成する場合、製図規格に完璧に対応しようとすると、思いのほか手間が掛かることがあります。そのため、場合によっては、使用している3D CADの2D図面機能を生かした“社内の図面化ルール”を整備し、作業の省力化や効率化を考えることも重要だと思います。
3D CADによる2D図面作成機能は、3Dモデルを利用して自動作図するため、図面ミスを減らし、業務の正確性を上げることができます。それが最終的には時間短縮などの省力化にもつながります。
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