オムロンが工場実践を通じて語る、IoTや5Gの「現実的価値」:MONOist IoT Forum 東京2019(後編)(3/4 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2019年12月12日、東京都内でセミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。後編では、オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 企画室 IoTプロジェクト 部長の小澤克敏氏による特別講演と、日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長の岡実氏によるランチセッション、その他のセッション内容について紹介する。
デジタル変革の手法やスマート工場の具体的なソリューション
「MONOist IoT Forum in 東京」では、ここまで紹介してきた基調講演、特別講演、ランチセッションに加え、6本のセッション講演も実施した。その様子をダイジェストで紹介する。
「体験価値」「感情価値」を訴えたセールスフォース・ドットコム
セールスフォース・ドットコムは「真のデジタル変革に必要なこととは」をテーマに、製造業がデジタル技術をベースに「モノ」から「コト」へのビジネスモデル変革を進める上で必要となる「体験価値」や「感情価値」の重要性について説明した。
セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアマネージャーの大森浩生氏は「製造業でも『モノ』から『コト』へのサービス化に大きな関心が集まっているが、サービス化を進めるにはビジネスモデルの変化についても考えなければならない。どうやって継続して使ってもらうのかという点や、顧客接点をどう確立するのかなどの点で、顧客視点に立ち、顧客の体験を通じた感情的な価値をどう実現するかが重要になっている」と語る。さらに「これらの長期的な関係性を効果的に実現するためには、組織構造も変える必要が出てくる」と大森氏は考えを述べている。
セールスフォース・ドットコムは顧客を中心とした「CRM」で情報活用を推進している。これを強みとして現在は、業種別ソリューションにも取り組み、製造業向けソリューションの展開にも力を入れている。セッションではアマダなど国内の導入事例などを紹介した他、セールスフォース・ドットコム ソリューションセールスエンジニアリング本部 サービスクラウドソリューション部 Service Cloud Specialist 宮坂裕貴氏によるスマートマンションをイメージしたデモなども行われた。
ビジネスプロセス改革がデジタル変革の鍵だと訴えたIFSジャパン
IFSジャパンは「ビジネスプロセス指向で実現するデジタルトランスフォーメーション」をテーマに、デジタル変革を実現するためにどういう手段や指標が必要になるのかという点について説明した。
IFSジャパン 営業統括部長 面屋友則氏はデジタル変革への取り組みについて「手段を見てしまってはいけない。まず考えるべきは企業としての戦略である。現在は手段はベンダーを探せば多くのことができる段階に入っている。企業戦略を考えてその中でデジタル技術をどう当てはめていくのかということを考えれば、使う用途やビジネスKPIなどの設定も自然に行えるようになる」とビジネスプロセスを基準とした考えの重要性を訴えた。
その例として、デジタル化が進んでいる航空宇宙業界の取り組みを紹介した。航空宇宙業界で、戦略(目標)として多くの企業が実現に取り組むのが「使用したい時に必要な機器が使用可能な状態
である」という状況を作り出すことが。これを実現するためには「補給の効率化」や「整備生産作業の計画と管理」「コスト改善」などの課題が出てくる。これらの指標がKPI(重要業績評価指標)となる。ただ、従来通りの手法ではこれらのKPIを抜本的に改善することはできない。そこでデジタル技術を活用して改善を目指すというのがデジタルトランスフォーメーションだというのだ。
面屋氏は「航空宇宙産業でいえば、センサーの装備や操縦時情報の取得、ネットワーク構築などが実際の取り組みに当たる。これらの試行と実証を繰り返すことで、KPI改善につなげるという流れが、デジタル変革の本質だ」と語っている。
産業用IoTプラットフォームとしてのSCADAの価値を訴えたリンクス
リンクスは「『本物は、既に現場で動いている』スマートファクトリーの現実解と未来像」をテーマとし、「デジタルツイン」が現実的にさまざまな工場で取り入れられている点や、その実現のポイントとなる「SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)」の位置付けについて説明した。
リンクス 制御システム事業部 齋藤孝平氏は「産業用IoTの活用においてはデジタルツインが大きな役割を担っているが、デジタルツインはサイバーフィジカルシステム(CPS)を実現するということがまず前提となる。そのためには工場内でのレイヤーを縦方向につなぐということが必要になるが日本の製造業の多くは、PLCとMESの間にあるSCADA層をあまり重視してこなかった。ただ、IoTの世界ではこのSCADA層が非常に重要になる」と語っている。「SCADA」はある意味で製造現場の見える化ツールと見られるケースも多いがリンクスでは「産業用IoTプラットフォーム」だと位置付けているとし、自動車分野や製薬分野での導入実績などを紹介した。
また、同社が取り扱うSCADA「ZENON」を導入した事例としてトヨタ自動車の製造現場における情報共有の取り組みについて紹介。トヨタ自動車では、現場の情報が個別のサーバなどに散在しており、情報不足や情報連携の困難さなどが生まれていた。そこで、これらを解決するためにSCADAを導入。データの一元管理と連携により、素早く、無駄のないアクションを実現することを目指したという。
リンクス 制御システム事業部 菊池雄介氏は「抜け漏れのない情報収集ができるようになったことで異常解析などが行えるようになった他、サイクルタイム解析などで生産性改善などへの取り組みを広げていくことができている。まずは現場の現実的な課題に対して今つぶせることを行い、その先につなげていくという流れだ」と語っている。
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