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デジタルツインでサプライチェーンをシームレスにつなぐ、商機は“際”にあり製造業IoT(1/2 ページ)

「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」のセミナーに日立製作所 インダストリー事業統括本部 CSOの森田和信氏が登壇。『デジタルで「際」の課題を解決するトータルシームレスソリューション〜ロボティクスSIによる4Mデータ活用のさらなる高度化〜』をテーマに講演を行った。

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 日立製作所が東京都内で開催したプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」(2019年10月17〜18日)のインダストリー分野のセミナーに、同社 インダストリー事業統括本部 CSOの森田和信氏が登壇。『デジタルで「際」の課題を解決するトータルシームレスソリューション〜ロボティクスSIによる4Mデータ活用のさらなる高度化〜』をテーマに講演を行った。

拡大するデジタルツイン市場とイノベーション・ホットスポット

日立の森田和信氏
日立の森田和信氏(写真は2019年4月開催の「第8回 IoT/M2M展 春」の特別講演で撮影)

 日立は、デジタル化が大きく進展する中で新技術が出てきており、その新技術と人がどうつながっていくのかが、顧客である製造業や流通業に向き合っていく上で重要になると考えている。また、新たな動向として注目されているのが「デジタルツイン」の市場だ。これまで機器単体、設備単体のデジタルツインはあったが、そこから一段レベルが上がり、ラインや工場全体、さらには事業全体をデジタルツイン化することにより、サイバーの世界で検証し、リアルの世界につなげていくというビジネス市場が拡大するとみている。デジタルツインの市場規模は、2018〜2025年までの年平均成長率で40.7%に達するという予測もある。

 また、世界的なトレンドとして「イノベーション・ホットスポット」が拡大している。代表的なものとして、米国のシリコンバレーやインドのバンガロール、中国の深センなどが知られている。今後は、これらのイノベーション・ホットスポットがさらなる広がりを見せていくことになりそうだ。例えば、欧州ではGDPR(一般データ保護規則)によるデータの域外移動を規制して囲い込んでいる中で、東欧地域の技術人材が注目されている。一方、中国は、官民でAI(人工知能)大国化を推進するために緩い規制でデータの蓄積を進めているなどの地域的な特色が出てきた。森田氏は「日本にとっては、グローバルの中でこれらの技術拠点がどのように動き、それらとどうつながっていけるかが重要だと考えている」と語る。

 現在、最も大きな変革が起きている事業分野として日立が重視しているのが「サプライチェーン」だという。デジタル化によって、個人とサプライヤー間での直接取引が拡大し、さらにクローズドだった市場がオープン化されて、サプライチェーン自体が地域的および時間的に分散化するなど形態も変化してきた。そして、それらの変化に対応できるフレキシブルなサプライチェーンが求められている。

 製造業のこれまでのサプライチェーンは、自社の製造拠点で集中生産を行い、そこからグローバル市場に製品をデリバリーするという形態が一般的だった。このサプライチェーンに起こりつつある変化のキーワードになっているのが「ニア・マーケット」だ。ニア・マーケットでは、自社拠点だけでなくシェアリングなどを活用し、市場に近いところでグローバルのサプライチェーンを最適化していく。

 サプライチェーンの粗付加価値(減価償却費を含めて積上法で計算した付加価値)は、経済価値であるとともに、フリクションコストとしての削減対象となっている。「商品を届ける」という経済活動は「モノをつくる」こととほぼ同程度の経済価値を生み出すことから、製造業を中心にサプライチェーンの最適化は大きなテーマとなってきた。日立では、未来の産業・流通分野ではさまざまな「つながり」が進展するとみている。またサプライチェーンは、つながるだけではなく、個人とサプライヤーがダイレクトにつながる、いわゆる中抜きなどの現象もしばしばみられる。

 このように、サプライチェーンを跨いだつながりなども社会というものが一層進展する方向性がある。それまでつながっていなかったモノとつながることにより、その「際」のには必ず課題が発生する。日立は、「そうした課題を『OT×IT×プロダクト技術』によって解決することで、つながる社会を作り、さまざまな価値向上に貢献していく」(森田氏)ことをコンセプトとして事業を展開していく構えだ。

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